危険なケミカルワールドに生きていることを自覚せよ!

実話を基にして告発を描く社会派ドラマの多くは、法廷での勝利がクライマックスとなる。そこに着地しないのが本作のユニークな点だ。
アメリカの“ミナマタ”というべき大企業を相手取った公害裁判。和解を経ても訴えた側の戦いは続く。大企業はつねに権力を味方に付け、庶民を苦しめる。そこに社会のいびつな構造が浮かび上がる。
アート指向の強いT・ヘインズが社会派劇を撮ったのは意外だったが、化学物質がもたらす人体の異変を『SAFE』で描いていたことを思えば腑に落ちる。自分の身は自分で守るしかない。そのためには無知ではいられないし、戦い続けなければならない――そんなテーマを含めてズシっと来る力作。