監督の作家性とエンタメ性の融合に成功

2013年11月10日 くれい響 キャプテン・フィリップス ★★★★★ ★★★★★

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キャプテン・フィリップス

 ソマリア海域人質事件を、『ユナイテッド93』も手掛けたドキュメンタリー出身のポール・グリーングラスが監督するのはとても自然な流れである。とはいえ、同じ実話の映画化、しかも、同じ極限状況に追い込まれた人間を描いた作品でも、ノースターだけで固めた『ユナイテッド93』とトム・ハンクスを主演に据えた本作とでは、監督の狙いは若干違う。

 あくまでも、本作はハンクス目的の一般客向けに、ソフトな作りを心掛けたといえるだろう。手持ちカメラのブレも少なく、フィリップス船長と彼を人質にしたソマリア人青年との交流を描いたドラマも強め。後半、ネイビーシールズの救出作戦も、唯一の失敗作『グリーンゾーン』での反省点を踏まえた作りになっている。

 そんな監督の作家性とエンタテイメント性の融合という意味では、本作は成功といえるだろう。本作で“『ボーン』シリーズの人だけではない監督”と感じたら、尋常じゃないほどハードな出世作『ブラディ・サンデー』でド肝を抜かれてほしい。

くれい響

くれい響

略歴:1971年、東京都出身。大学在学中、クイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作、「映画秘宝(洋泉社)」編集部員を経て、フリーとなる。現在は映画評論家として、映画誌・情報誌・ウェブ、劇場プログラムなどに寄稿。また、香港の地元紙「香港ポスト」では20年以上に渡り、カルチャー・コラムを連載するほか、ライターとしても多岐に渡って活動中。

近況:『イップ・マン 完結』『追龍』『WAR!!!』『眉村ちあきのすべて(仮)』『プロジェクトグーテンベルク 贋札王』などの劇場パンフにコラム・インタビューを寄稿。「究極決定版 映画秘宝オールタイム・ベスト10」のほか、「1980年代の映画には僕たちの青春がある(キネ旬ムック) 」「悲運の映画人列伝(映画秘宝COLLECTION)」「俺たちのジャッキー・チェン (HINODE MOOK)」に作品・解説などを寄稿。そのほか、「シネマトゥデイ」にて菅井友香さん、「TV LIFE」にて伊藤沙莉さん、「CREA WEB」にて森崎 ウィンさんなどのインタビュー記事が掲載中。

サイト: http://blog.goo.ne.jp/asiareview/

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