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ムーンライト (2016):映画短評

ムーンライト (2016)

2017年3月31日公開 111分

ムーンライト
(C) 2016 A24 Distribution, LLC

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

色彩で表現する、史上最も美しい詩的な黒人映画

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 トッド・ヘインズの『キャロル』に次いで、美しく描いてこそLGBTQへの偏見をはね返すことが出来るという強い信念が、通奏低音として流れている。こんなにもカラフルな黒人映画はいまだかつてなかった。色彩を際立たせる撮影とポスプロに唸らされる。人種・同性愛・貧困。声高に訴えることなく、怒りを内に秘めつつも状況に合わせ、ナイーブだった子供が、やがて強靱さを手に入れて成長する、逞しさとやるせなさ。9歳、16歳、26歳――ロジックではなくエモーションで繫がる三章構成。マハーシャラ・アリの存在は、生きるよすがとして、性的あこがれとして、少年の心の中で生き続けたことを示唆する、寡黙で詩的な演出が素晴らしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ブルーに生きるか、ブラックに生きるか?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 家は貧しく、母は麻薬中毒、学校ではイジメられ、自分はゲイ。生きにくい環境をあたえられた少年の物語ではあるが、悲劇性を押し付けはしない。

 “ムーンライトに照らされると黒人の少年も青色に見える”とは劇中のセリフ。しかし主人公は“ブルー”ではなく“ブラック”として成長する。“お涙頂戴”ではなく“共感”を引く物語になりえたのは、痛みの中で大人になる、そんな人間の強さが常に物語のベースになっているから。

 主人公の疎外感をリアルに伝えるうえで、入れ込まず突き放さず、観察者の視点に徹したビジュアルの効果は大きい。それでいて水泳シーンに代表される詩的映像美も兼備。作り手の繊細な感性が光る逸品だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

オスカー逃した『ラ・ラ・ランド』勢も納得の力作

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

これまでのブラックスプロイテーション映画とは一線を画す、シンプルで、美しく、せつないラブストーリー。同じブラピ率いるプランB作品『それでも夜は明ける』同様、人種問題の痛みに加え、LGBTも描いているため、かなりヘビーになるはずなのに、ならないのは新鋭監督の放つ、強いアート性にほかならない。息を呑む映像美はもちろん、『ブエノスアイレス』『トーク・トゥ・ハー』でおなじみの「ククルクク・パロマ」を流すベタさに加え、オーケストラの生演奏をチョップ&スクリューする手法も取り入れた、音楽センスも抜群。出番が少なかろうが、マハーシャラ・アリのオスカー受賞は納得すぎるし、『ラ・ラ・ランド』より断然こちら!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ヌーヴェルヴァーグ的リアリズムは見る人を選ぶかも

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 黒人として、ゲイとして、自らのアイデンティティを模索する主人公の姿を、少年期・思春期・青年期の3幕に分けて描いていく。イジメに家庭内暴力、ネグレクト、麻薬、貧困など彼を取り巻く状況は過酷で悲惨だが、しかしバリー・ジェンキンス監督はあえてドラマチックなアプローチを避け、それらを一歩引きながら冷静に見つめていく。
 普通であればここから盛り上げたり感動させたりするような場面でも、そこへ至る前にプッツリと次のシーンへ切り替える。その淡々としたリアリズムは、ヌーヴェルバーグ的とも言えよう。そういう意味では、恐らく見る人を選ぶ作品だと思うし、オスカー作品賞の受賞についても賛否あるのではないだろうか。

この短評にはネタバレを含んでいます
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