映画　イチケイのカラス (2023)：映画短評

おなじみ草野球シーンはあるが、TVシリーズのファンが観たい“みちおと坂間の掛け合い”が少なすぎる。オトナの事情を察してしまうが、苦肉の策で盛り込んだ挙句、吉田羊の登場以外も『ガリレオ 沈黙のパレード』の影がチラつく事態に！　「同じ東宝×フジテレビ映画で！？」と思わせつつも、“坂間の成長物語”という切り口として見れば、決して間違っていないだろう。また、夜の工場シーンなど、四宮秀俊が魅せる映画的な撮影と『コンフィデンスマンJP』シリーズの田中亮監督らしい豪華キャストの見事な捌きとエンタメ精神で乗り切った感アリ。

リーガルドラマの中でも異端の連ドラが映画化。法律の在り方、人間の営みの在り方を程よい緩さと程よいほろ苦ビターなテイストで描き、”イチケイらしさ”健在といったところ。テレビドラマの映画化も立ち位置が変わってきて”シネコン時代のプログラムピクチャー”になったと表現する人がいますが、まさにその任務をしっかりと果たしている一本です。もちろん竹野内豊と黒木華のコメディ適正の高さも変わらずですし、一人ずつ理想のキャストを据えていった結果、実現したという超豪華キャストも”ただ出てるだけ”ではなく、ちゃんと機能しています。