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バルド、偽りの記録と一握りの真実 (2022):映画短評

バルド、偽りの記録と一握りの真実 (2022)

2022年12月16日公開 180分

バルド、偽りの記録と一握りの真実

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

森 直人

イニャリトゥの『8 1/2』、あるいはバードマンの仮面の告白

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ベテラン映画監督のオートフィクション系が流行の今日この頃だが、本作は露骨にフェリーニの『8 1/2』(63年)の系譜。風貌からしてイニャリトゥに良く似た主人公のメキシコ帰郷。例えば北野武監督の『TAKESHIS’』(05年)等もそうだが、混乱したアイデンティティの在処を捜す自己批評的な内面の旅を、抽象的な想念を絡めて率直に描いたトラジコメディとでも呼べる内容だ。

驚かされるのは楽屋裏のような赤裸々さ。セレブ化した自分と出自や母国の現状、作品の主題性との段差。さらに家族との関係や軋轢など、極私的なジレンマや欺瞞が「遊び心を加えたドキュフィクション」(台詞より)へと変形/昇華されて差し出される。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

シュールなイメージに宿る鬼才のパワー

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『8 1/2』や『メキシコ万歳』『ホーリー・マウンテン』などの作品が脳裏をよぎる。ブニュエルも含めて、偉大な先人たちのシュールレアリズムを踏襲したかのようなイニャリトゥの新作。

 制作に当たり、“理解したり、合理化したりする方法はなかった”とイニャリトゥは語るが、それも納得。映像作家である主人公と家族のドラマには収まらず、メキシコの戦争の歴史や荒野のイメージなど、映像は奔放に流れてゆく。

 過去のイニャリトゥ作品のドラマ性を期待すると肩透かしを食らうが、絵的なパンチ力は相当なもの。まずは彼の言葉どおり、考えず、感じて見て欲しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

実験的な帰還

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが久しぶりにホームグラウンドのメキシコに還ってきての一本。ただ、ここまでイメージと感覚に寄せた映画になるとは思わなかったですね。いくら巨匠の映画とは言えここまでアーティスティックな作品を創ることが許されるのは今はNetflixだけでしょう。全く違う作品ですが、ノンスタ―映画で自伝的な内容などなど、立ち位置的には『ROMA/ローマ』と重なる部分が多く感じます。この監督が創造性に優れた人であることは知っていましたが、ここまでビジュアルで遊べる人だとは!嬉しい発見でした。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

万人向けではないが、誰にも共感できるところがある

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

イニャリトゥは、今作を「理解しなくていい。感じてほしい」と言っている。ひとつのしっかりしたストーリーがあるわけではなく、現実、妄想、夢などのシーンがつながっていく今作には、それが正しい姿勢だ。これは間違いなくイニャリトゥにとって最もパーソナルかつ野心的な作品。万人向けとは決して言えないが、一方で誰もがそれぞれに共感できる部分を見つけられるはず。主人公のシルベリオ以上に長くL.A.に住んできた筆者は、どちらの国、文化にもきちんと属しておらず、狭間にいるという気持ちに強烈に共感できた。親子の部分に思い入れできる人もいるだろう。とにかくこんな映画を作らせてくれるところはNetflixしかない。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

イメージの奔流に押し流される

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公は、イニャリトゥ監督自身を思わせるメキシコ移民のドキュメンタリー映像作家。画面には、彼が抱くタイトル通りの"偽りの記録"と"一握りの真実"が様々な光景となって映し出される。家族の出来事、移民としての想い、彼にとってのメキシコ的なるものの概念などなどが、夢の世界の法則に沿った不思議なリアリティで次々に出現し、中にはこの監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を連想させるパワーに満ちた長回しもある。空や海、砂漠といった大きな風景が映し出される時には、ダリウス・コンジ撮影による光と色彩の配合に圧倒される。それらのイメージの奔流に押し流される快感が待っている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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