親友かよ (2023)：映画短評

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』でおなじみ、安心と信頼のタイの映画制作会社GDHらしい、変化球型の青春映画。同じ主演・ヒロイン共演作『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』同様、2時間超えに不安を覚えるも、こちらは急展開が連続。大きな軸となるのは高校生の自主映画制作で、『SUPER8/スーパーエイト』ノリもありつつ、機材の向上やクリストファー・ノーラン信者のメンバーなど、しっかり現代風にアップデート。日本では同日公開となる『おばあちゃんと僕の約束』（こちらもGDH作品！）同様、自らの利益のために偽善者になっていた主人公が覚醒するという、いかにも仏教国らしい展開に胸熱くなる。

近年のタイ映画の秀作と同様、予定調和に進まず、かと言って展開が破綻せず、味わったことのない感覚を導く好例。主人公の思いに添いつつ、別のキャラの心情に急カーブしたりするし、唐突なエピソード、過去のフラッシュバックなどかなり自由な構成も、いちいちそこで素直に笑ったり、感動できてしまうのは、基本に「人生に大切な友人とは？」がブレずに据えられているから。

もちろん映画ファンがグッとくるのは、ほぼシロウト集団の映画撮影。手作りするしかない演出、高まるチームワークなど胸アツ要素に加え、ノーランから是枝まで名監督を歌詞にした劇中歌など細部も楽しく、誰のために何を残すかという着地点がまっすぐに心を揺さぶる。