ひゃくえむ。 (2024):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
研ぎ澄ませた表現で描かれるアスリート哲学
100メートル走に懸けたアスリートの熱情のドラマ。『音楽』のユルい笑いから一転、岩井澤健治監督の新作は熱のこもるものに。
天才型と努力型というわかりやすさで分別せず、天才にも努力が要るし、努力家にも才能があるという切り口が面白い。そんな彼らが、わずか10秒程度の勝負に挑み、勝ち負けを競う。各々のアスリート哲学をにじませたドラマの運びが巧い。
岩井澤監督は『音楽』と同様に、ロトスコープを導入。これにより、映像はときに実写のような感覚を覚えさせる。スポーツを題材にしたアニメーションの表現の、新たな可能性を見た気がする。
ものすごくリアルだけど実写では表現できない世界
とことんオフビートな作風で異例のロングランヒットを記録した劇場アニメ『音楽』の岩井澤健治監督による長編第2作。本作でも前作と同じくロトスコープが駆使された絵作りが徹底されているが、リアルさを超えたその先の表現に引き込まれる。ものすごくリアルなんだけど、実写では表現できない100メートル走の世界。溜めて溜めて爆発する感じは、スポーツを見ているというより音楽を聴いている感覚になる。そういう意味では、この座組みは必然だったのだろう。さわやかな青春ものではないし、バチバチのスポーツものともちょっと違う。たった100メートル、たった10秒に人生を賭けて燃焼している人々の生き様を叩きつけられた気分だ。





















