ベートーヴェン捏造 (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 2.7
軽やかなチャレンジ精神で、今どきのテーマをさりげなく
見慣れた日本人俳優が19世紀ウィーンの人間になりきるという“演劇的”スタイルに、各俳優の個性も生かされ、要所では軽いノリが妙味となり、とても観やすい作り。違和感を予感させつつ、優しく裏切っていく。その一方で、時空を超えて「フェイクニュース」「炎上案件」など今どきのテーマに繋げていくところに、作品の意義を感じさせる。
ただ、登場人物の心象・行動を、こと細かくその俳優のナレーションで被せてしまうのは、演出や演技で伝えることを放棄しているようで残念。
『オズの魔法使』など多くの作品で試みられた、「現実の人物を演じた俳優が、別世界で別キャラになる」形式も、現実パートのリンクでもっと面白くできたはず。
フィクションの力を見せつける
ベートーヴェンの秘書だった男が、実際のべートーヴェンとは別の、彼の想いの中で燦然と輝く「こうあるべきなベートーヴェン」を創り出す。そんな「フィクションが持つ力」を描く物語を、19世紀ウィーンの人々を、日本人の俳優たちが、バカリズム脚本ならではのイマドキの言葉使いで演じるという、まさにフィクションの力を見せつける形式で描き出す。その二重構造が魅力。その演出にすんなり入っていけるよう、物語の外枠に「現代の日本の学校で、教師がある生徒に語る」という枠組を設けた構成も技あり。
古田新太のベートーヴェンを筆頭に、日本俳優が演じる有名音楽人の名前が字幕で表示されるたびに、なんだか楽しい。
英雄たらしめるものとは?
今ではほぼ捏造とされているベートーヴェンの秘書・シンドラーによるベートーヴェンの伝記がいかに作られたかを描いた一本。脚本をバカリズムが担当し、これまでもバカリズム作品を手掛けてきた関和亮が監督するということで、安心感がある。毎作ごとに変則的な笑いを仕込んできたバカリズムだが、今回は思った以上にまじめな作りの映画になった。英雄を英雄たらしめるものは真実なのか?理想なのか?という真理についての物語だった。想いの渦にのめり込んでいく様を独特な目力のある山田裕貴が好演してる。西洋人を日本人が演じることに関しては賛否あるかと思うが、思えば演劇などでは当たり前の手法でもある。





















