アスファルト・シティ (2023):映画短評
ライター2人の平均評価: 3
救命士の目から見たアメリカ社会最底辺の凄まじい世界
『暁に祈れ』以来となるジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督の最新作は、救急救命士たちの目から見たアメリカ社会最底辺の悲惨な現実。舞台は大都会ニューヨークのスラム街。そこは犯罪と暴力と貧困と薬物にまみれた、まさにこの世の地獄みたいな世界だ。助けた相手から罵詈雑言を浴びせられることもしばしば。なおかつ、クソみたいな医療制度が現場の足を引っ張る。志の高い新人救命士は理想とのギャップに狼狽し、現実はこんなものさとうそぶくベテラン救命士は人知れず心を病む。重くのしかかる無力感。それでもなお、彼らは体を張って誰かを救わねばならない。ストーリー的に既視感があることは否めないが、しかし見応えは十分である。
救命隊員たちの地獄のような日常を描く
日々、人々のために奉仕してくれる救急救命隊員に焦点を当てる物語。だが、最も過酷でストレスに満ちた状況が次々に出てくる上、主人公らのオフの場も暗く、どんどん救われない気分になっていく。彼らの大変さはしっかり伝わってくるし、スコセッシの「救命士」に影響を受けているのは明白。だとしても、本当にこれほど毎日が地獄なのだろうか。モラルの危うさまで描かれ、本物の救命隊員さんたちはどう受け止めるのかとも思ってしまう。俳優たちは良い。ベテランと新人という組み合わせは定番ではあるが、ストイックで貫禄のあるペン(実は彼の前にメル・ギブソンが決まっていたらしい)と純粋さのあるシェリダンは、しっくりとくる。





















