ブラックバッグ (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 3.5
人間心理の綾が、味わい深い
大人の映画。スパイ同士が二重スパイは誰なのかを探り合う、犯人探しミステリだが、舞台は英国、音楽もデヴィッド・ホルムズの大人な音色、登場人物はみな本心は顔に出さない大人たちで、嘘をつくだけでなく、罠を仕掛ける。犯人を探す謎解きも面白いが、それにも増して、登場人物たちが本当は何を考えているのかが明かされていく過程が、味わい深い。無駄を排して必要部分だけで構成されたタイトな94分の尺も大人向き。
それにつけても、スパイ夫婦を演じるマイケル・ファスベンダーとケイト・ブランシェットが、最適なキャスティング。脇を固めるナオミ・ハリス、トム・バークら実力派英国俳優たちの静かで熱い演技合戦も見もの。
秘密だらけの業界で愛を貫くのは可能なのか
スタイリッシュな大人の映画。豪華キャストを揃えてみせるところもまたソダーバーグらしい。スパイものでありながらバイオレンスはなく、それぞれのキャラクターと彼らの人間関係を少しずつ見せていく。群像劇の中心となるのは、何があっても愛を貫き続けるジョージ(マイケル・ファスベンダー)と妻(ケイト・ブランシェット)の愛。秘密、嘘だらけの業界で個人的な信頼を守っていけるのかというのは目の付けどころとして面白いだけに、もう少し突っ込めたらより良かったかも。ただ、このふたりはさすがで、それだけでも見る価値あり。言葉が少なく、感情を表に見せないのに目を離せないファスベンダーはとりわけ凄い。




















