災 劇場版:映画短評
ライター4人の平均評価: 4
「志村、後ろ後ろ!」と叫びたくなるヤバ過ぎるピタゴラスイッチ
不可解な通り魔的な怖さが、連ドラ全6話分を解体&大胆にリビルトした本作ではさらに増している! それはヤバ過ぎるピタゴラスイッチ。不条理の連鎖反応によって次々と人が死に、その結節点には必ず、香川照之扮する“ある男”の変移した姿がある。
かのローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」の詞を映画化すると、こうなるのかも。“ある男”が姿を現すたびに、心の中で「志村、後ろ後ろ!」と叫びたくなるのだが、恐ろしいのはソイツには「後ろ」――前後左右といった意味概念が失効していること。そして映画館を出てからは、観客ひとりひとりが無慈悲にも劇中の登場人物となってしまう仕掛けも。やはりヤバ過ぎるピタゴラスイッチ!
香川照之という“不穏”が生きた編集の絶妙!
6話のドラマを再編集した劇場版だが、この編集がみごとというほかない。単に6話をつなげたのではなく、各話の主人公の歩みを散りばめて恐怖の群像劇を成立させる。
各人の日常におけるストレスの、不穏への変換が、まずとっかかりとして効いている。その上で、各地に現われる“あの男”の異様さと言ったら! ビニールカーテンや窓、フロントガラス越しに、薄っすらと香川照之が見えてくるだけでドキっとしてしまう。その映像の凝り具合もいい。
余白が多いぶん“わざわい”が単なる不幸か否かを考えさせる内容にもなっている。ドラマ版にはドラマ版の面白さもあるが、まだ観ていない方は映画版をまず観て欲しい。
それは、予期せぬ時にやってくる
死体の美しさが強い印象を残す。海の中、女性の死体の長い黒髪が波に揺れる。雨に濡れて冷えたコンクリートの上、死んだ少女の顔の上を蟻が這う。監督を手がけた監督集団「5月」の関友太郎と平瀬謙太朗は、「ツイン・ピークス」の"世界でもっとも美しい死体"を意識したと語っている。
日本中のどこにでもありそうな幾つもの場所。そこで暮らす小さな集団の中で、次は誰が死ぬことになるのか推測しつつ見ていると、死は、災のように、意外な人物に訪れる。犯人が誰かは分かっているが、現れるたびに別の人物になっているので、人間ではなく、ある種の概念のように見えてくる。常に不穏な音楽が、長く余韻を引く。
見事な映画用編集で『セブン』を思い出す“じわじわ来る”戦慄
各1時間の6話ドラマを約2時間の映画にまとめる。6話それぞれで描かれた6つの場所、人物を、短いシーンで交錯させ、6カ所の事件で背後にいる「男」が浮かび上がっていく過程に戦慄する。映画的編集の巧妙さ、美しさに引き込まれ、そこに香川照之の得体の知れない「演じ分け」がプラスされ、静かなサイコの世界から抜けられなくなる感覚。並列で展開することで「男」の恐ろしさ、真意がより鮮明に伝わるかと。
捜査官も含め6カ所の登場人物たちも、まっとうに生きているようで、それぞれ負い目や邪悪さを備えていたりと、人間の闇が生々しい手触り。
無表情ゆえの怖さ、一見やさしい態度なのに目の奥は…など香川の真骨頂に何度も震える。























