センチメンタル・バリュー (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4.5
家族ドラマ+映画作り舞台裏の幸福なケミストリー
この監督の前作は、これ見よがしな演出や語り口が気になって入り込みづらかったが、今回は登場人物に感情移入する流れがスムーズ。父、姉、妹のそれぞれどこかに自分と重なる何かを見つけやすかった。映画監督や俳優という特別な職業ながら、家族関係は思いのほか等身大なところに本作の美点がある。俳優たちがこぞってオスカーノミネートされたのは、観客との“地続き”を表現できたからか。
一方で、インタビュー現場、ハリウッドとの関係、何かと話題の配信会社の勢いなど、映画業界の舞台裏ネタも巧妙に取り込まれ、プレシャスな体験も届ける。
“映画撮影”そのものが仕掛けとなるクライマックスは、想像力と創造力の美しさに思わず拍手!
稀有な調和に向かう傑作
ヨアキム・トリアー監督のひとつの到達点。家族ドラマ、芸術論、女性の物語といった複数の主題が均整の取れた筆致で編まれていく。物語の中心にある「家」はまるで生き物の如く息づき、家族の歴史と傷を静かに抱え込む。ベルイマン映画の影が濃く差すが、トリアーは巨匠の冷徹さを現代的な優しさへと変換。『仮面/ペルソナ』を受け継いだイメージもあり、顔が溶け合う様なアイデンティティの揺らぎを再解釈する。
Netflixの実名登場も驚き。芸術と産業の緊張関係がメタな層を与え、父娘の断絶と創作の葛藤がより鮮明になる。そしてラビ・シフレの名曲「キャノック・チェイス」が流れると、ふっと映画全体が爽やかな風通しを得るのだ。






















