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センチメンタル・バリュー (2025):映画短評

2026年2月20日公開 133分

センチメンタル・バリュー
(C) 2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

相馬 学

娘には娘の、父には父の、愛の飢餓

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 トリアー監督の作品には家族を題材にしたものが多いが、本作では映画界の一端を描きながらリアルな方向にそれを引き寄せる。

 父娘の葛藤が物語の軸で、彼らが似た者同士であることが次第に浮かび上がるばかりか、自殺したその上の世代から“親の不在”という要素が見えてきて、考えさせるものがある。3世代にわたる負の連鎖の物語というべきか。

 冒頭で提示される、家を擬人化した視点が興味深く、家が感じる痛みや寂しさが家族のそれとさりげなくシンクロ。4世代目への希望を盛り込んでいる点もいいし、心の機微を最小限の言葉と、表情やしぐさで伝える俳優陣の表現も素晴らしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

親子の不和と葛藤のドラマに説得力あり

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 家庭よりも仕事を選んだ世界的な映画監督とその娘たち。姉は有名な役者、妹は歴史研究者。母の死で久しぶりに父親と再会した姉妹は、家族の悲しい過去を題材に新作映画を撮ろうとする彼に振り回される。本年度のアカデミー賞でも話題のヨアキム・トリアー監督の最新作は、芸術と歴史を媒介して和解への道を模索していく親子の心理的葛藤を描いたベルイマン的なファミリー・ドラマ。決して悪人ではない。むしろ善人なのだが、しかし自己中心的で独善的で共感性に著しく欠けた父親と、そんな彼に幾度となく傷つけられ反発しながらも憎み切れない姉妹の関係性に、思わず我が身を重ねる人も多かろう。そこ宿る赤裸々な真実味こそが本作の肝である。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

リアルさと繊細さに満ちた家族の群像劇

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 すべてのキャラクターの設定、感情に、リアルさがある。繊細さにもあふれ、壊れた家族のドラマながら、ありがちなパターンに陥らない。トリアー監督は「わたしは最悪。」で組んだレインスヴェがもっと成熟した女性を演じる姿を見たいと、彼女を念頭に主人公ノラのキャラクターを書いたというのも、おおいに納得。彼女同様、舞台出身のレッリオースを相手にした姉妹の会話のシーンが、見えない家族の傷を静かに表現。年老いてパーソナルなテーマに立ち戻る映画監督、そこにキャリアのターニングポイントを見る若いアメリカ人女優、その作品を配給するのがNetflixだという業界関連の描写もさすが。脚本と演技力の勝利。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

家族ドラマ+映画作り舞台裏の幸福なケミストリー

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

この監督の前作は、これ見よがしな演出や語り口が気になって入り込みづらかったが、今回は登場人物に感情移入する流れがスムーズ。父、姉、妹のそれぞれどこかに自分と重なる何かを見つけやすかった。映画監督や俳優という特別な職業ながら、家族関係は思いのほか等身大なところに本作の美点がある。俳優たちがこぞってオスカーノミネートされたのは、観客との“地続き”を表現できたからか。
一方で、インタビュー現場、ハリウッドとの関係、何かと話題の配信会社の勢いなど、映画業界の舞台裏ネタも巧妙に取り込まれ、プレシャスな体験も届ける。
“映画撮影”そのものが仕掛けとなるクライマックスは、想像力と創造力の美しさに思わず拍手!

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森 直人

稀有な調和に向かう傑作

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ヨアキム・トリアー監督のひとつの到達点。家族ドラマ、芸術論、女性の物語といった複数の主題が均整の取れた筆致で編まれていく。物語の中心にある「家」はまるで生き物の如く息づき、家族の歴史と傷を静かに抱え込む。ベルイマン映画の影が濃く差すが、トリアーは巨匠の冷徹さを現代的な優しさへと変換。『仮面/ペルソナ』を受け継いだイメージもあり、顔が溶け合う様なアイデンティティの揺らぎを再解釈する。

Netflixの実名登場も驚き。芸術と産業の緊張関係がメタな層を与え、父娘の断絶と創作の葛藤がより鮮明になる。そしてラビ・シフレの名曲「キャノック・チェイス」が流れると、ふっと映画全体が爽やかな風通しを得るのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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