黒牢城 (2026):映画短評

2026年6月19日公開 147分

黒牢城
(C) 2026映画「黒牢城」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

なかざわひでゆき

黒沢監督の作家性も際立つ推理サスペンス時代劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 織田信長に反旗を翻した戦国武将・荒木村重が有岡城に立て籠もり、説得のため訪れた織田家の軍師・黒田官兵衛を捕らえて地下牢に幽閉した…という史実を基にしつつ、その閉ざされた城内で次々と起きる怪事件の謎を、村重と官兵衛が解き明かしていく推理サスペンスに仕立てた異色時代劇。本作が初の時代劇となる黒沢清監督だが、しかし映像をパッと見ただけで黒沢作品と分かるのだから凄い。これぞ作家性というもの。物語の背景に浮かび上がるのは、権力者の野心や思惑によって戦争が繰り返され、人間の命が粗末にされる戦乱の世にあって、その巻き添えとなる名もなき民衆の痛みと悲しみ。その普遍性は’26年の今、更なる説得力を持つ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

明らかに別次元を狙った演出で、どっしりと深い後味に

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

基本的にカメラは俳優に近寄らない。舞台劇でも観せるかのようなロングショット、長めのカットが多様され、ミステリーにかかわらず、アップによる俳優の演技をヒントにさせないという気概が感じられる。実際、表情がわかりづらいことで謎の面白さも増す。監督の大胆な意図は成功か。
俳優は全身の佇まいや声の演技が試され、主演の本木雅弘を中心に、堅実に、重厚に応える。
一方で、事情を知る者の尋問シーンなど王道的な演出を適所に挿入。過去の名作映画のオマージュも発見でき、豊穣な映画体験を約束する。
戦国時代を精緻に再現しつつ、安易な闘争思想という現代社会へのアンチテーゼも明瞭に込められ、そんなメッセージにも心打たれた。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

見応え抜群の本格ミステリー

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

籠城中の城を巨大な密室に、幽閉している天才軍師を安楽椅子探偵に据えるという、アイデアが光る一本。本当に大河ドラマではないかと見まごうほど、隅々まで豪華なキャストが集結。これだけ揃うと壮観の一言で、誰が犯人で、誰が被害者であっても納得いく並びになっています。ミステリーやサスペンスはタイトな作りの方が良いと思っているのですが、本作は逆にたっぷり時間をかけないといけないものになっていました。ある強い信念を持つ本木雅弘、囚われの身ながら明晰な頭脳をフル回転する菅田将暉、どちらもさすがの一言です。黒沢清監督は今回が初時代劇とのことですが力強い演出を堪能しました。まだまだ見たいですね。

この短評にはネタバレを含んでいます
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