平行と垂直 (2026):映画短評
ライター3人の平均評価: 4.3
オーソドックスに人間の機微を描くことの尊さ
丁寧に編まれた人情劇。なんて良い映画なんだ、というシンプルな驚きと感動に包まれる。基本を大切にした描写の積み重ねが、日々の祝福を静かに開いていく。“あにいもうと”を演じる安田章大とのんの力量はもちろん、良心と実相がバランスよく配置された役者全体のアンサンブルが美しい。
大阪・堺の町並みや電車などの風情が生活圏をリアルに呼吸させる。フィクションで何を描けるか?という問いに、現実との摩擦から目をそらさず地続きの姿勢で応じる。小林聖太郎監督としては『かぞくのひけつ』から繋がる要素もありつつ、成熟した眼差しが染みる最高作になったのでは。「今日も来たで~」と現れる紗奈ちゃん(河野咲良)の大物感も凄い!
関西の人情喜劇にのせて贈る、私たちが目指す社会
多様性が叫ばれる一方で、SNSなどで露見される偏見や差別。そんな時代にエンタメは何が出来るのか? そう問い続けて制作したであろう、制作陣の真摯さが伝わってくる作品だ。独自のルールで生きる自閉スペクトラム症の主人公と定型発達の妹が、妹の結婚話を機に人生を見つめ直す。思わぬ本音をぶちまけたり、他者とのトラブルも招くが、皆が衝突をきっかけに互いの違いを理解しようと歩み寄る。”こうあるべき”という社会の姿を声高に言うのではなく、関西ならではの人情喜劇に仕立てあげて提示した小林聖太郎監督テイストが心をくすぐる。このなかなかに濃ゆい物語の中で、のびやかに演じるのんに新たな一面を見た思い。
主演二人の組み合わせが最高
二人で支え合うように生きてきた兄と妹、そんな中で妹に結婚の話が持ち上がって…。という話の大筋の部分は古典的と言ってもいいほどベタな設定。しかし、兄が自閉スペクトラム症を抱えているというところで、物語に大きな起伏を生み出していきます。その兄を演じているのは安田章大。オリジナルの脚本に惹かれ、企画から関わるという力の入れよう。これを受ける形になる妹を演じるのんの好演も光ります。総じて出演陣が作品に対して誠実に向き合っていることが伝わってきます。交じり合うことは無いけれど支え合い続ける”平行と垂直”というタイトルも素敵です。























