GOOD BOY/グッド・ボーイ (2025):映画短評
ライター5人の平均評価: 3.4
犬映画に慣れてる人も、これは新鮮すぎる感覚では?
「犬目線」というアイデアだけで、どんな映像が完成したか確認する価値がある一作。監督自身の愛犬を主役に使った効果が大きいし、顔が見えない登場人物を監督とその妻が演じるという演出の妙が生きている。
最も驚くのは、犬の表情が雄弁にその気持ちを伝えていること。尻尾や足の動きまで駆使しての驚いたり、ドキドキしたりはもちろん、「飼い主の傷を不審に思う」という高等テクニックも披露しているのだ。忠誠心という点でもエモーショナルで、切実に心が締め付けられる瞬間が。
犬映画に、ホラーとしての忍び寄るスリルを加味し、ユニークな世界が立ち現れたが、中盤以降は新鮮味が薄れていき、上映時間のわりに長く感じるかもしれない。
これぞ、犬の“名演”!
主人公は、あくまでペットの犬。ホラーにこのアイデアを導入したことが新鮮で、オカルトストーリーを珍しい視点から堪能できる。
犬の“演技”の中でも、耳を内側にまくるようなしぐさに恐怖を漂わせている点が面白い。吠える場面はごくわずかだが、見た目だけでも怯えは伝わってくるし、それを引き出したスタッフの根気にも唸らされた。
ペットとは無縁の人生をおくっている筆者ゆえ、少々シュールに思えてしまう場面もしばしば。愛犬家には、これらが意味のあるものに見えるのだろうか? そんなことを気にしつつも、特異な幽霊屋敷奇談を楽しんだ。
主演犬の名演技に舌を巻く異色のオカルト・ホラー
もしも超常現象に気付いたのがペットの犬だけだとしたら?という発想から生まれたオカルト・ホラー。愛犬インディを連れて田舎の祖父宅へ引っ越した病身の青年に、その家に取り憑いた悪霊の魔手が忍び寄る。設定そのものは極めてありきたりだが、しかし視点を「犬目線」に絞って描くことで、ありきたりな映画にはないスリルと恐怖とアドベンチャーが生まれる。動物の勘で悪霊の存在をいち早く察知し、なんとかして飼い主に危険を知らせて守ろうとするインディ(実は監督の愛犬)の健気なこと!演技という概念のない動物の演技をカメラに捉えるべく、撮影には3年を要したそうだが、その豊かな感情表現と絶妙な恐怖演技には舌を巻く。
気づくと犬の気持ちになっている
主人公は、飼い主が大好きで、飼い主にも愛されている犬。その犬の視点で描かれる映像を見ているうちに、気づくと犬の気持ちになっている。それはおそらく、犬の主観映像のせいでも、犬が見ているものが見えるせいでもなく、犬の顔のアップを多用する演出のせいなのではないか。犬の表情が大きく映し出されるたびに、犬は何も言わないが、そして実際は何も思っていないのかもしれないが、それとは関係なく、そこに否応なしに犬の感情を読み取ってしまうのだ。そして犬の気持ちと同化してしまう。主演の犬は、実際に監督の愛犬とのことで、その絆ゆえ撮影できた表情なのか、それともそう見えるだけなのか。これも映画のマジックなのだろうか。
アイデア、愛、我慢強さから生まれたユニークな1本
アイデアと犬のかわいさで見せる、新鮮なホラー。主演インディは監督の愛犬。ほとんど顔を出さない飼い主トッドを演じるのは監督自身(時には監督の妻も。俳優シェーン・ジャンセンがやってきたのはポストプロダクション段階)。しかも、撮影には3年をかけている。自分が映画に出ていると知らない“主演俳優”から自然な演技を引き出せたのは、そんな愛と我慢強さがあってこそなのだ。
「ポルターガイスト」にインスピレーションを得て生まれたストーリーはきわめてシンプルだが、73分、不穏な雰囲気を保ち続ける。動物好きなら楽しめること間違いなしのおすすめ作品。オリジナルポスターのビジュアルもセンス抜群。

























