春樹 (2025):映画短評
漂流する個人と都市――痕跡や境界を詩的に移ろう
中国朝鮮族三世として育ち、移動の人生を送ったチャン・リュル監督(1962年生)の視線は、故郷でありながら異邦のように感じられる成都を漂う女性・春樹の足取りと重なる。標準語しか話せなくなった彼女は自分の声の輪郭を探し続ける。中国の多言語が交錯する街の空気は、帰属の揺らぎを静かに照らす。
再開発で姿を変える都市の表層と、峨眉映画製作所の廃墟に残る文化の残響。その対比の中で、彼女の歩みは過去と現在の境界をたゆたう。“パルムドール団地”や「中国のパリ」といった言及が差し込み、街の文化的厚みが彼女の漂流感を反射する。途切れた時間に触れ直す余韻は、同じ主要キャストの姉妹作 『ルオムの黄昏』に続いていく。
この短評にはネタバレを含んでいます


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