恥を知れ!と叫ぶ人も…カンヌ結果総評

第70回カンヌ国際映画祭

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パルムドールを手にし大喜びのリューベン・オストルンド監督 - Pascal Le Segretain / Getty Images

 現地時間5月28日、第70回カンヌ国際映画祭がコンペティション部門の授賞式とそれに続く審査員会見、受賞者会見をもって閉幕した。最高賞のパルムドールを受賞したのは、『フレンチアルプスで起きたこと』が第67回の同映画祭ある視点部門審査員賞に輝いたスウェーデン人監督リューベン・オストルンドの新作『ザ・スクエア(原題) / The Square』。会見場で授賞式の中継を見ていた記者の中には、この結果に「恥を知れ!」と叫ぶ人も何人かいたが、個人的には同作こそパルムドールにふさわしかったように思う。

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 『ザ・スクエア(原題)』は、現代アート美術館のキュレーターとして尊敬を集めるクリスチャンが、盗まれた携帯電話を取り戻すために取ったバカみたいな行動がもたらす事態を描いた上質なコメディー。個人主義、貧富の差がもたらす階層間の断絶、過激な表現に走るメディアなど、今日のあらゆる問題を取り上げているのだが、それがこれ以上なくエレガントかつコミカルなやり方なため、かなり笑えて夢中で観られ、それでいて最後には深く考えさせられる。授賞式では飛び跳ねて大喜びしていたオストルンド監督も「映画の内容に人々の関心を引くことが重要」と語っている通り、問題を提示するために映画という媒体を一番効果的に使っていたのは本作だった。クリスチャン役のデンマーク人俳優クレス・バングも素晴らしく、審査員たちも彼の演技に言及していた。

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 豊作だった前年と比べて飛び抜けた作品のなかった印象の今年のラインナップだが、その中でも下馬評が高かったのは上から順に『BPM (ビーツ・パー・ミニット)(英題) / BPM (Beats per Minute)』『ラブレス(英題) / Loveless』『ザ・スクエア(原題)』の3作。特に現地フランスメディアの間では、エイズの感染による差別や不当な扱いに抗議し、政府や製薬会社に対して変革を挑んだ若者たちの苦悩と人生の輝きを描いたロバン・カンピヨ監督の『BPM (ビーツ・パー・ミニット)(英題)』の人気が高かっただけに、不満の声が上がったよう。ゲイであることを公言している審査員長のペドロ・アルモドバル監督は、涙で言葉を詰まらせながら同作で描かれたヒーローたちをたたえていた。同作は、パルムドールに次ぐグランプリを受賞した。

 そして、グランプリに次ぐ審査員賞に輝いたのは、『父、帰る』などで知られるロシア人監督アンドレイ・ズビャギンツェフの『ラブレス(英題)』。12歳の息子のことなど忘れたかのように、離婚を控え、新しい生活への準備を進めるボリスとジェーニャ。そんなある日、息子の姿が見えなくなり……。タイトル通り「愛のない」家族の胸を締め付けるような事件の顛末とその後が、ロシアの鬱々とした空の下で描かれる。

女優賞のダイアン・クルーガ

 女優賞は『イン・ザ・フェイド(英題) / In The Fade』(ファティ・アキン監督)でテロによって夫と息子を殺された女性にふんしたダイアン・クルーガーの手に。家族を失った女性がそれといかに向き合うかを強く、そして繊細に演じており、女優賞はダイアン一択と見られていた。ダイアンにとっても思い入れの深い役になったようで、「今もわたしの中に彼女がいると感じるし、とてもパーソナルな映画になった」とコメントしている。男優賞は『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア(原題) / You Were Never Really Here』で売春組織から少女たちを救うアンチヒーローにふんしたホアキン・フェニックス。この結果にはホアキン自身が一番驚いており、まごついた様子で受賞の喜びを語るシーンは授賞式のハイライトといえる。

2冠!リン・ラムジー監督とホアキン・フェニックス

 脚本賞は、『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア(原題)』のリン・ラムジー監督と『ザ・キリング・オブ・セイクリッド・ディア(原題) / The Killing of A Sacred Deer』のヨルゴス・ランティモス監督が二人で分ける形に。ラムジー監督は、虐待を受けて育った主人公(ホアキン)の苦痛に満ちた内面も映画ならではの方法で鮮烈に描写するなど、アメリカ人作家ジョナサン・エイムズの同名小説を見事に脚本化。『ロブスター』で第89回アカデミー賞脚本賞にもノミネートされたランティモス監督は、ある少年に追い詰められる外科医の姿を通して「正義」や「選択」について残酷ながら美しく、それでいてコミカルに描き、前作に続きオリジナリティーあふれる作品に仕上げた。

 そして監督賞は、『ザ・ビガイルド(原題) / The Beguiled』のソフィア・コッポラ監督が受賞した。女性監督としては史上2人目、『戦場』のユーリア・ソーンツェワ監督(ソビエト)以来実に56年ぶりの快挙。『白い肌の異常な夜』としてドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演で映画化されたこともある小説を、同じストーリーでありながら、女性目線で、そして彼女ならではのビジュアルセンスで新たな作品に仕上げた点が評価されたのだろう。

 また、映画祭初日に審査員長のアルモドバル監督が「劇場公開される予定のない映画は、最高賞パルムドールのみならず、ほかのどんな賞も受賞すべきではないと考えます」と発言して話題になったNetflixの二作品(ポン・ジュノ監督作『オクジャ/okja』とノア・バームバック監督作『ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ(ニュー・アンド・セレクテッド)(原題) / The Meyerowitz Stories (New and Selected)』)は無冠に終わった。どちらも良作ではあったが(特にバームバック監督作)、相対的に見るとNetflix作品だから選ばれなかったと結論付けるほどではなく、不満の声も聞かれなかった。(編集部・市川遥)

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