映画&ドラマで観る「とんねるず」の魅力

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木梨が、「GANTZ」などで知られる奥浩哉の人気漫画に基づく『いぬやしき』で16年ぶりの映画主演 - (C) 2018「いぬやしき」製作委員会 (C) 奥浩哉/講談社

 去る3月22日、約30年にわたって放送された人気バラエティー番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)が惜しまれつつ終了した。およそ1か月後、新たにスタートしたのは「石橋貴明のたいむとんねる」(フジテレビ系)。「時計の針をちょっと戻してみませんか?」。毎回かような言葉で始まるトーク番組に倣って、いきなり1980年代初頭にプレイバック! 石橋貴明と木梨憲武ーーとんねるずの2人がまだ、素人時代のことである。オーディション番組「お笑いスター誕生!!」(1980~1986、日本テレビ系)に出演した際、審査員の一人だった“タモさん”ことタモリは彼らの“部室芸”を見て、「何をやってるかわからないけれども、面白いからいい」と支持し、その一言がプロの道へと進む後押しになったのだそう。(轟夕起夫)

【動画】木梨憲武、『いぬやしき』犬屋敷壱郎との共通点語る

 つまりは、何が言いたいのか? もともとタモさんも、師匠なし、舞台での下積みもなく、素人の“密室芸”からキャリアを始め、既成概念を覆して世に出た“笑いの変革者”であったが、とんねるずはさらにそれを広くダイナミックにやってのけ、時代の寵児となったのだ。もっと言えば“タカさん”と“ノリさん”は芸人というよりも、群を抜いた“お笑いスーパースター”に駆け上ったのである。

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これぞ真骨頂!伝説の深夜ドラマ「トライアングル・ブルー」

 そんな彼らは映画やテレビドラマの世界をも、活躍の場とした。日本の“お笑いコンビ”でとんねるずほど、映像の仕事でもさまざまな才能と出会い、触発されつつ独自のスタンスを貫いた者はいない。まず触れたいのが、深夜枠ながら人気を集めた連ドラ「トライアングル・ブルー」(1984~、テレビ朝日系)。脚本に秋元康が名を連ね、六本木界隈でロケをし、可愛かずみ川上麻衣子らヒロインを相手にタカさんとノリさんがアドリブ満載で遊びまくったバラエティー風味の恋愛ドラマだ。先ほど「独自のスタンスを貫いた」と記したが、この“脱線行為”と“遊戯精神”こそがとんねるずの真骨頂!

森田芳光テイストに染まった『そろばんずく』

 エンディング曲がアン・ルイスの大ヒットナンバー「六本木心中」だったことも特筆すべき「トライアングル・ブルー」の放映時、一方でとんねるずは、バラエティー番組「オールナイトフジ」(1983~1991、フジテレビ系)や「夕やけニャンニャン」(1985~1987、フジテレビ系)での破天荒な振る舞い、アナーキーな“成りあがり”ぶりでとりわけ若者たちの心を掴んでいった。そこに「彼らの主演でコメディーを」とアプローチしてきたのが、当時『家族ゲーム』(1983)、『メイン・テーマ』(1984)、『ときめきに死す』(1984)、『それから』(1985)などで同じくニューウェイブとして注目されていた森田芳光監督。で、夢のタッグが実現し、生み出されたのが永遠のカルトムービー『そろばんずく』(1986)である。内容を要約すれば、業界を二分する広告代理店「ト社」と「ラ社」との熾烈な争いを描いた狂騒劇、ということになるが、ここではアドリブを禁じられたタカさんとノリさんが全編、森田芳光テイストに染まって、しかも往年の東宝のヒット企画『社長』シリーズのアップデートを演じながら映画を無意味に脱線させまくる。そういえば「お笑いスター誕生!!」で2人を褒めた審査員には、タモさんの良き理解者であったギャグ漫画界の巨人・赤塚不二夫もおり、とんねるずの笑いのDNAの濃さを感じさせるのだが、『そろばんずく』でのタカさんとノリさん、いや、出演者全員がまるで赤塚漫画の奇天烈キャラのようで、これは実にオルタナティブな怪作であった。

とんねるずが故・森田芳光監督とタッグを組んだ映画『そろばんずく』DVD(価格:3,800円+税)発売中 発売元:フジテレビ/ニッポン放送/A to Z 販売元:ポニーキャニオン (C)1986フジテレビジョン/ニッポン放送/AtoZ

 彼らは本作の主題歌「寝た子も起きる子守唄」も担当。とんねるずは“歌うスター”でもあり、それは(見方によってはBLチックな)連ドラ「お坊っチャマにはわかるまい!」(1986、TBS系)や「ギョーカイ君が行く」(1987、フジテレビ系)に収められた数々の楽曲が証明している。2人の“脱線行為”と“遊戯精神”は、脱ドラマ的な手法と相性が良く、銭湯を舞台にした「時間ですよ ふたたび」(1987、TBS系)、「時間ですよ たびたび」(1988、TBS系)もその延長線上にある。そもそも久世光彦演出、森光子主演の「時間ですよ」シリーズは、脱ホームドラマの元祖。とんねるずはこのテレビ界のレジェンドたちと顔を合わせ、さらに「火の用心」(1990、日本テレビ系)で脚本・倉本聰、演出・吉野洋石橋冠つかこうへいの代表作のドラマ化「銀ちゃんが行く 続・蒲田行進曲」(1991、TBS系)では伊藤輝夫テリー伊藤)の演出と、素晴らしいテレビ人との仕事を続けざまに残していった。

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石橋が『メジャーリーグ2』を機にハリウッドで活躍

 映像におけるタカさんとノリさん、2人の関係性には彼らが大好きな(テレビドラマ史上に輝く)「傷だらけの天使」(1974~1975、日本テレビ系)の名コンビ、萩原健一水谷豊が体現していた“ブロマンス”の世界が強く反映していると想像するのだが、それについてはまた別の機会に。さて、「ねるとん紅鯨団」(1987~1994、関西テレビ系)、「とんねるずのみなさんのおかげです」(1988年~1997年、フジテレビ系)、「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」(1991~2001、日本テレビ系)など、大ヒット番組を掛け持ちしていた1990年代前半、それぞれ単独の仕事が増えていき、タカさんは何とハリウッドデビューを果たす。チャーリー・シーン主演の『メジャーリーグ2』(1994/デヴィッド・S・ウォ-ド監督)である。帝京高校野球部出身のタカさんは劇中、日本の人気球団からスカウトされた助っ人外野手という設定で、そのサムライ・スピリットが他のメンバーの闘志に火をつける重要な役であった。これでアメリカで認知され、アンディ・ガルシアが双子の二役にふんした『悪魔たち 天使たち』(1995/アンドリュー・デイビス監督)や『メジャーリーグ3』(1998/ジョン・ウォーレン監督)にも出演。国内では三谷幸喜脚本のテレビドラマ(ビリー・ワイルダーの名作映画『アパートの鍵貸します』を下敷きにした)「今夜、宇宙の片隅で」(1998、フジテレビ系)のフリーのカメラマン役で軽妙さを出し、新境地を開いたのだった。近年の映画出演には『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007/三池崇史監督)の弁慶役があるが、勇ましくガトリング砲をブッ放すも、忠誠を誓っていた義経の怒りを買って急所を撃たれ、“男”でなくなり“女”に目覚めてしまう……と、相変わらずのハチャメチャぶり!

三池崇史監督作『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』の石橋貴明(C)First Look Intl/Photofest

16年ぶりの主演映画が公開される木梨

 かたやノリさんはといえば、こちらは三谷幸喜の書き下ろしの短編を毎回違ったスタッフ、キャストで作ってみせるテレビドラマ「3番テーブルの客」(1997、フジテレビ系)に参加、出演と演出を兼ね(=第14回)、「甘い結婚」(1998、フジテレビ系)、「小市民ケーン」(1999、フジテレビ系)と一貫してドラマでは「気の弱い、冴えない男」の受難を演じ続けた。その集大成的な映画が(またもや!)三谷幸喜原作、脚本の『竜馬の妻とその夫と愛人』(2002/市川準監督)で、タイトル通りに坂本竜馬の未亡人をめとったものの、あまりに甲斐性がなく、愛人との駆け落ちを企てられてしまう主人公を巧みに造形した。この作品から約16年ぶりに主演した新作映画『いぬやしき』(上映中)が、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭の「インターナショナルコンペディション部門」で(グランプリにあたる)ゴールデンレイヴン賞を獲得した。会社や家族から疎外されている初老のサラリーマン(→からの大変身)という役柄は、まさしくノリさんのためにあった、と言っても過言ではないだろう。

木梨が甲斐性のない夫をはまり役で演じた「竜馬の妻とその夫と愛人」DVD(価格:6,000円+税)発売中 発売元:博報堂DYメディアパートナーズ 販売元:東宝

 今回の『いぬやしき』の受賞はとても喜ばしいが、できることならもう一度、タカさんとノリさん、とんねるずの2人がスクリーンに並んで登場している姿を観てみたい。例えば今の彼らならば、ニール・サイモンの戯曲なんかどうだろう。そう、ウォルター・マッソージャック・レモンの名コンビで映画化した『おかしな二人』(1968/ジーン・サックス監督)のアレンジ版が成立すると思うのだが。もちろん脚本・監督を手掛けるのは、三谷幸喜である。いかがだろうか?

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