小島秀夫監督「デススト2」発売迎え「よくやった自分」 日本人俳優とのタッグの可能性にも言及

大ヒットゲーム「メタルギア」シリーズなどで知られるゲームクリエイター・小島秀夫監督が、最新作「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」の発売を迎えた26日、都内で開催されたユーザー向けのイベント「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in TOKYO」開催前にメディア向けの合同インタビューで思いを語った。
【画像】美しい…ゲーム続編「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」場面カット
本作は、小島監督率いるコジマプロダクションが2019年に発表した「DEATH STRANDING」の続編。伝説の配達人サム・ポーター・ブリッジズ(ノーマン・リーダス)が、物資を各地に届けながら、謎の現象によって分断された大陸を横断して社会をつないでいくオープンワールドアドベンチャー。
自分に「よくやった」という気持ち
「つながり」をテーマにつづられる感動的なストーリーと映像美、そして世界中のプレイヤーとつながる斬新なゲームシステムが注目を浴びた前作「DEATH STRANDING」。コロナ禍を経て、約5年ぶりに迎えた続編の発売に、小島監督は「よくやったぞ自分という感じ」と感慨深げに振り返る。
「2019年に1が出て、翌年から(続編)の準備に入ってたんですけど、コロナ禍で世の中がみんなリモートになりました。そして僕もちょっと病気をしまして、ゲーム作りができるかどうか……っていうところまで行った。40年近くゲーム作りをしてきて1番のピンチだったというところだったので、こうして発売を迎えたことについては、ちょっと言葉にできないんですけど、よくやったみんな、よくやった自分……! という感じですね」
配達をメインにした、これまでなかったゲーム性を生み出した前作。「反響としては『DEATH STRANDING』の方があったと思いますが、それはこの世に存在しないゲームだったから」という小島監督は「(前作は)この世にないゲームを作るために、ゲームの導入部とかテンポとか、そういう部分で意図的にとんがったところがあった」と振り返る。
「(『DEATH STRANDING』は)この約5年間で約2,000万の人が遊んでくれました。今回はその土台の上で続編を作ろうと。当然、前作のファンには喜んでもらいたいですけども、いろんなデータを見て、前作のテンポについていけなかった人もいたことがわかったので、かなりテンポ感やシステムを変えました。ただ、山を踏破する感覚であったり、前作の雰囲気が好きな人たちのためにも、全く違うものを作ってはいけないと思っていたので、続編という位置の中で、『デススト』を好きな人のために、できる範囲でとんがったことをやっという感じです」
ドラマ面の挑戦
そのうえで、小島監督は、前作ではできなかった、ドラマ面の挑戦についても言及する。「前作は、1人で山を越え、川を越え、物資を人に届けに行くゲームでした。すごい孤独な一方で、自分のような人たちがネットのむこうにいっぱいいて、それを共有するっていうゲームだった。ただ今回は、マゼラン号というのがついてくるんです。カイラル通信を繋がないとマゼラン号は追いかけてこれないので、新天地に行く時は……ドールマンというキャラは一緒ですけど、(基本的には)やっぱり1人。でも、(カイラル通信を)つなぐとマゼラン号が来ますし、通信圏内であればどこでも移動できるので、そこはちょっと前とは違います」
「『ランボー 最後の戦場』でランボーにも帰る家があったと思いますが(笑)。サムにも帰る家ができたと。マゼラン号のメンバーもどんどん増えていき、そこでメンバー間のいざこざとかもあったりします。そうしてみんなが仲良くなったり絆を深めていって、そこにサムが帰宅することになります」
「1の時はスタジオの立ち上げもあってスタッフも少なく、あまりリスクが取れないので、(主要な)登場人物があまりいなかったんです。プライベートルームに、サムとフラジャイルが3、4人が集まるようなシチュエーションが多かった。それだとドラマとしてはちょっと格好がつかないので、今回は、マゼラン号に5、6人のキャラクターが集まって演技するようなシーンを目指しました。ただ、これがまた大変で(笑)。スケジュール調整もそうですし、(人数が増えると)CGの描画もテクスチャーの量なんかも多くなって、かなり難しいんですが、そういう地味なところも頑張って、なんとかできたのかなと思っています」
ノーマン・リーダスとの再タッグ
また、前作に続いてサムを演じたノーマン・リーダスのパフォーマンスにも太鼓判。「ノーマンは、どちらかというとスティーブ・マックイーンとかチャールズ・ブロンソンといった、僕の子供時代のヒーローたちのようなスーパースターという感じ。僕にとっても子供の頃のヒーローだったし、いわゆるスーパースターというか、ロックスターというか……彼がそこに立ってるだけで成立してしまうという、ダスティン・ホフマンのようなタイプとはちょっと性格が違う。『ノーマン・リーダス』というキャラクターがそこにあるというか。それをなるべく引き出せるような作りになっています」
そのうえで、ノーマンの演技面の挑戦にも言及。「あまり多くは言いませんが、今回はドラマ的にサムにいろんなことが起きて、けっこう号泣するシーンが多いんです。そこでノーマンに撮影でけっこうな回数泣いてもらうことになったんですが、ある時、朝一から泣いてもらうシーンがありまして(笑)。その時は、朝から泣かせやがってと、ちょっとムッとしていましたね(笑)」と明かしていた。
日本人俳優とのタッグの可能性
本作にはノーマンのほか、レア・セドゥ、トロイ・ベイカー、ニコラス・ウィンディング・レフンら前作キャストが続投。また新たに、エル・ファニング、映画監督のジョージ・ミラーやファティ・アキン、そして、日本から忽那汐里がメインキャラクターとして出演している。
忽那とのタッグについて、小島監督は「これは技術的な問題なんですけども、アジアの方をCGで描写するとけっこう似ないんです。特に若い人は、肌がとても美しくてきめ細かいので、どうしてもCGに見えてしまう。やはりシワがいっぱいあったりする方がディテールが出るので。ただ、今回は以前とは違うテクノロジーを使おうということで、実験を兼ねて忽那さんにお願いして、満足いくレベルでできたと思います」と説明。
そのうえで、今後の日本人俳優とのタッグの可能性を尋ねられると「日本の俳優の方にも出てほしいんですが、ノーマンさんやエルさんたちと一緒に、ロサンゼルスのスタジオで収録するので、英語がネイティブレベルで話せないとちょっと困る。撮影が終わったら一緒にご飯も行きたいですし。それで、日本語ができて、英語も堪能という人をものすごく探したんですけど、なかなかいなくて。忽那さんはオーストラリア出身で英語も堪能だったのでオファーさせていただきました」
「英語もできるし、お会いしたら素敵な方だったので、一緒にやろうということで。僕は完璧主義者に見えるかもしれませんが、現場では俳優の皆さんの言うことを聞くので、お互いに意見を出しあいながらやっていくのですが、そのなかでも忽那さんは立派でした。あれだけの面子のなかでも全然物怖じせずにすごく自然体で、みんなと仲良くしてくれたので、僕としてもすごく助かりました」
「黒髪の再現なんかも、光の反射や質感などの関係で難しいんですよ。次の段階ではもっとリアルにできると思いますし、また日本の俳優さんとも一緒に仕事できたらと思ってます。日本を舞台にしてもいいですけどね」
エンターテインメントとして楽しんで
ハリウッド級のキャストが再び集結し、アップデートされたシステムだけでなく、さらにドラマチックに進化した物語を期待させる本作。一方で小島監督は「映画を作っているつもりはない」と断言する。「カットシーンはありますけど、ゲームでしかできないことをやるのが基本です。映画を見て育ったので、ライティングやキャラクターの造形といった部分は映画の影響を受けてますが、映画を作ってる案件ではないっていうのは意識してます」
そのうえで本作について「『配達するゲーム』ではあるんですけど、あまり深く考えずにゲームとして、エンターテインメントとして楽しんでいただければと思っています。戦闘が苦手な方は遠回りして目的地を目指してもいいですし、逆に戦闘がしたい人は正面から突っ込んでいって、武器もいろいろと用意してあるのでそれを使ってもいい。配達だけに集中したい人や、道路を整備したい人はずっと作っていても構わないんです。そうやって、いろいろな遊び方を試してもらって、その先にあるストーリーで感動……というか、繋がることとはどういうことかっていうことを感じてもらって、それを日常の中にも持ち帰って、みなさんも“配達人”になっていただければと思います」とメッセージを送っていた。
「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」は発売中 プラットフォーム: PlayStation(R)5


