近年の実写化トレンドは好きじゃない…それでも『ヒックとドラゴン』監督が実写化を手掛けることにした理由

本日公開の実写版『ヒックとドラゴン』を監督したのは、アニメーション版『ヒックとドラゴン』3部作の監督を務めたディーン・デュボアだ。もともと同作の実写化を望んでいたわけではなかったというデュボア監督がインタビューに応じ、実写版の監督に立候補した理由を語った。
【画像】『ヒックとドラゴン』の実写キャラクター&ドラゴンたち
名作アニメーション映画の実写版リメイクはもう長いこと映画界のトレンドとなっているが、デュボア監督は「僕はそのトレンドのファンではないんだ。なぜなら、実写版はそのアニメーション映画をそもそも名作たらしめたハートや魂を、本当に頻繁に失ってしまっているから」と打ち明ける。「僕は『ヒックとドラゴン』がそうなってしまうのを見たくなかった。だからこそ、彼ら(配給のユニバーサル)が実写化を計画しているのなら、自分が監督することを申し出たいと考えた」と他の人がするぐらいならと名乗り出た。
「僕には実写映画の経験はなかったが、アニメーション映画『ヒックとドラゴン』が持つ驚きと感情をどうすれば保つことができるかはわかるし、このキャラクターたちと世界を知っている。だから、もしユニバーサルが初実写映画監督の僕に賭けようと思ってくれるのであれば、僕はそうしたものの守護者になれる、とね! そして、彼らはそうしてくれた。とてもありがたく思っているよ」と自身に任せてくれたスタジオに感謝した。
『ヒックとドラゴン』のアニメーション版と実写版、それぞれを監督したことで気付いた違いについてはこう語る。「実写映画では、シーンの準備をしてリハーサルをし、皆がコスチュームを着て美しく飾られたセットに立ち、そしてカメラを回し始めると、僕はそこから一旦離れることが重要なのだと知った。俳優たちが対話のリズムやセリフの間などで自らシーンを形作れるようにすると、新しいアイデアが生まれてくるんだ。アニメーションはとてもかっちりと構造化されている。僕たちはすべてをデザインし、組み立てないといけないから。声の演技ですら、僕たちはカットしたり、好きなバージョンを使ったりと操作することができる。アニメーションではすべての要素を作らないといけないからこそ、いつだってコントロールが重要になる」
「だが、実写映画では、監督が一歩引いて、新しいことが起こる余地を与えた時に、魔法や驚きが生まれる。そして、その状況に即座に反応できるようにしておき、カメラを動かしたり、照明を調整したりする。その瞬間に起きていることをつかめるようにね。自然発生的なところがあるんだ」
「僕はそれがとても気に入った。僕は脚本家でもあるからシーンについては常にはっきりとしたイメージが頭の中にあるのだが、映画製作というとても共同的なアートフォームで、同じ題材で他の人々がどう解釈し、生み出すのかを見るのは本当に素晴らしい。時に、僕が想像したものよりずっと良いものができたりもするから。そんなみんなで作り上げるプロセスというものがとても気に入った」と実写映画の監督ならではの要素を楽しんだと明かした。
自然発生的なものを歓迎する一方で、主人公ヒック(メイソン・テムズ)とドラゴンのトゥースの間に初めて絆が芽生えるシーンや、衝撃のラストなどファンの心に刻まれた名シーンに関しては、意図的にアニメーション版に近づけたという。「『ヒックとドラゴン』における重要な瞬間というものを、まず自分たちで特定したんだ。絆のシーンやラストシーン、ヒックとトゥースが初めて一緒に飛ぶシーンなどね。そうした印象的なシーンをあまり変えすぎてしまうと、ファンが怒ると思ったから。だからそうしたシーンに関しては、ファンに敬意を払い、なるべくアニメーション版に近いものにしようとした」
デュボア監督はヒックとトゥースの間に初めて絆が芽生えるシーンについて、「とても特別な撮影だったよ」とうっとり振り返る。「撮影する時、セットでジョン・パウエルの音楽を流していたんだ。そしてメイソンと、トゥースの頭を動かすパペッティア(操り人形師)のトム・ウィルトンとの美しい“ダンス”があった。頭は等身大の大きなサイズで、あごも耳も動くもの。彼はメイソンの目線のためにただ頭を持っているのではなく、あの瞬間を本当に演じていたんだ。だから、あの場に実際にトゥースがいると感じられたし、音楽も相まって、本当に美しいフィーリングを生み出していた」
「日々、なるべく早く撮影を進めようとはしていたけど、あのとても特別な2日間では、僕たちは感情が前に出てこられるようにすることができた。そしてメイソンは本当に美しい仕事をした。彼はこの映画とキャラクターをとてもよく理解しているのと同時に、とても直感的な俳優なんだ。必要な時に涙することができるし、トゥースが砂に書いた線の周りでステップをする時にはバレエダンサーとしての素養が出ていた」と満足げに語った。デュボア監督が作品の守護者として大切に作り上げた実写版は、アニメーション版のファンも納得させること請け合いの素晴らしい出来となっている。(編集部・市川遥)


