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実写『沈黙の艦隊』あり得ない画作りも解禁 吉野耕平監督が挑んだ「体感する潜水艦バトル」

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』の潜水艦バトルは、思わず身を乗り出しそうになる迫力だ
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 大沢たかお主演で、かわぐちかいじの大人気漫画を実写映像化した軍事サスペンス『沈黙の艦隊』シリーズの最新作『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(9月26日全国公開)を前作のシーズン1に続いて監督した吉野耕平が、前作以上のド迫力の激戦が展開する潜水艦バトルの映像化の裏側を明かした。

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 吉野監督は、2016年に新海誠監督の『君の名は。』にCGアーティストとして参加し、同年の第42回城戸賞ではオリジナル脚本が準入賞、2020年には脚本・VFXも兼任した『水曜日が消えた』で長編映画監督デビューし、2022年に監督した『ハケンアニメ!』が第35回日刊スポーツ映画大賞作品賞を受賞するなど数々の映画賞に輝く高い評価を受けた。

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 山崎貴曽利文彦と同じく、実写・アニメの双方で演出・脚本からCG・VFXなどの技術面まで総合的な映像表現に通じた吉野監督は、 VFXを駆使した潜水艦同士の戦いが大きな見どころとなるAmazon Original ドラマ「沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~」(2024)を最高の作品に仕上げるために欠かせない人材だった。

 引き続き本作でも監督を務めた吉野は、前作を踏まえた上で潜水艦バトルをどうアップデートしたかについて「テクノロジーはより進歩していますが、やっぱり登場人物たちの気持ちに乗っていけないと、潜水艦バトル自体の意味もないと思ったので、あまり最新テクノロジーに走りすぎて何をやっているかわからないような描き方にはならないよう心掛けました」と振り返る。また、前作では封じていた表現も解禁したという。

撮影中の吉野監督とプロデューサーを兼任した主演の大沢(C) 2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

 「どうしても潜水艦内って、窓がなくどの艦も似た空間なので、同じ画になりがちですが、新たなところに踏み込んでいかないと、観客の方に満足していただけないため、ドラマの描き方もカメラワークも、方向性は同じでも前作では避けていたことまで積極的に広げていこうと思いました。前作ではリアルさを狙っていたので、実際の艦内にカメラを設置して撮れないほどのヒキの画は撮らないなど、あり得ない画作りはあまりやっていないのですが、今回は例えば冒頭の艦内で人物が入ってくるところを俯瞰的な画角から撮っていたり、上から見たやまと艦内の部屋をちょっとシンメトリーな世界観としてビジュアル化するなど、見たことのない世界やビジュアルインパクトみたいなものを大事にしています」

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 「その一方で、壁にGoProみたいなカメラをつけて撮ったドキュメンタリーっぽい画作りで、画面がちょっと球体で黒みが見えているところもある。観客もいろんなアングルの画を見慣れてきているから、画面の端が見えたところで、物語を邪魔しないし、驚かずに受け入れてくれるだろうと、『哀れなるものたち』を観て思ったんです。全編飽きさせないためにも、象徴的な画やドキュメンタリーチックな画など、いろいろな撮り方を駆使しています」

 また、前作では“やまと”と“たつなみ”という2つの潜水艦の比較を意識していたため、「やまとは塵一つ落ちてないし、飲み食いさせないなど、できるだけ生活感を排除していました」とのことだが、今回は「やまとの艦内にも生活感や個人を感じさせるような、ボトルやメモなどを配置していて、人間味のようなものを出しています。また、敵艦の方にも、艦内にいる人たちの肌触りや息遣いが感じられるようなものを配置していくことを心掛けています」と人間同士が戦っていることが実感できるように描いているという。

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 今回は、北極海の氷壁下などを舞台に前作以上に激しい潜水艦バトルを描いているが、深海での戦いをわかりやすくかつ、面白く見せるためには、次のようなことを意識したという。

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 「艦外のCGと艦内のアングルは、事前に絵コンテで緻密に計画して撮っています。観客の気持ちが乗りやすいように、見ている方向など、潜水艦と人々の顔の向きを同一にしたり、できるだけ揺れや傾きを感じさせるよう意識しています。実際の潜水艦では、急カーブを曲がっても極端に傾くことはないのですが、そこは車やジェットコースターで急カーブした際に体が曲がるような感覚で画として思いっきり誇張して、観客が潜水艦の乗員たちの気持ちを体感できるアングルやカメラワークを作っています。ジャーナリストの市谷裕美役の上戸彩さんが記者会見で『見るというより体感する作品』だとおっしゃったのは、すごく的確に表現してくださって嬉しかったです」

全員で戦いのイメージを共有する「サッカーの作戦タイムみたいな感じ」(C) 2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

 絵コンテなどで緻密に計画しているとはいえ、スタッフとキャスト全員が、CGで表現される潜水艦同士の戦いのイメージを撮影現場のセット内で共有することも難しかったはずだが、「サッカーの作戦タイムみたいな感じ」で説明していたという。

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 「皆さんの経験値があったため、前作ほど手探りではなく、感覚的に映像化のイメージを掴んでいただいたところもありますが、撮影現場では撮っているシーンの状況をできるだけモニターや図面的なもので、図示しています。シーン毎に本当に劇中みたいに艦内セットの中心の海図台の前に集まって、『この後にこう魚雷を撃ってくるのでこうなります』『でもこの段階までは知りません』といったイメージを共有した上で、各俳優さんにどうリアクションをするか考えてもらいました」

 「まさに観客も劇中の人物と一緒に体感してもらえるような、一種のアトラクション的な気分を追求しました」と吉野監督が自負するとおり、今回は前作以上に手に汗握るスリリングな潜水艦バトルが全編にわたって楽しめるアクション超大作となっており、「4DXやスクリーンXなどの上映フォーマットとも相性がいいと思います」ともお薦めしていた。(取材・文:天本伸一郎)

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