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『秒速5センチメートル』山崎まさよし、28年前は“行き先がなかった”名曲 実写版で再起用「作者冥利に尽きる」

実写映画では劇中歌を担当した山崎まさよし
実写映画では劇中歌を担当した山崎まさよし

 松村北斗SixTONES)主演、奥山由之監督による実写映画『秒速5センチメートル』(全国公開中)では、原作アニメーションの主題歌である山崎まさよしの名曲「One more time, One more chance」が、劇中歌として印象的に使われている。劇中歌アーティストとして実写版にも続投した山崎が、1997年のCDリリースから現在まで、28年愛され続ける同曲への思いや映画について語った。

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「こんなに育ててくれてありがとう」

『秒速5センチメートル』より - (C) 2025「秒速 5 センチメートル」製作委員会

 連作短編アニメーション『秒速5センチメートル』(2007)から18年、山崎は再度の楽曲使用の依頼に「ありがたいと思いました。幸せな曲ですよね」としみじみと語る。「もともと行き先がなかった歌なんです。デビュー前に作っていて、シングルカットするとかでもなくて。ただ、押し曲になるだろうと思っていたところに、僕の初主演映画『月とキャベツ』(1996)のお話をいただいて、篠原(哲雄)監督が主題歌に使ってくださった。まさに“いつでも捜していた”んです(笑)」と歌詞を引いて楽曲の成り立ちを説明。その10年後、原作者である新海誠からのアプローチが、『秒速5センチメートル』との出会いだった。

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 「楽曲って一人歩きしていくんだなと思いました。特にこの曲は、劇中で流れたりすることで映像と一緒にあちこちを渡り歩いて、大きくなった感がありますね。自分で言うのもヘンですけど、まさに『類い稀な』楽曲だと思います」とし、「いろいろな場所でプロモーションビデオを作っていただいているみたいなものです」と小さく笑う。「他にもいろいろな作品で主題歌やエンディングテーマに使っていただいた楽曲はありますが、特にこれは映像との結びつきが強い気がします。不思議な曲ですよ」と自身の楽曲の中での立ち位置を示した。それは、同曲と『秒速5センチメートル』の描いている世界観が似ていたのも作用したのだろう。「シチュエーションが抒情的で、なおかつ切ないんですよね。たった1人で探していますから」と山崎は解説する。

 いまとなっては「『俺が作ってん!』と言ったら、『それがどないしてん』って返ってくるような気がします」と山崎。「もしこの曲が僕の子どもだとしたら、いろんな親の手を渡り歩いたみたいなものです。なんちゅう無責任な親やという話ですが(笑)。なので、自分で大きくなったというより、大きくしていただいた感じで、『こんなに育ててくれてホンマありがとう』と思っています」

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 関係者試写では、新海と久々の挨拶を交わしたという。「監督の初期の作品だったから、当時はすごく恐縮されていたのを覚えています。でも、あれよあれよという間に、素晴らしい作品をたくさんお作りになって。音楽に精通されているし、お好きなんだろうなと、すごく思いました」

 奥山監督とは、その試写が初対面だった。「お名前の通り、奥ゆかしくて丁寧な方でした。『(映画は)どうでしたか?』と聞かれたのですが、『素晴らしかったです』と杓子定規なお答えしかできず」と恐縮する。「本当に素晴らしかったんです。でも、僕が関わっているかどうかは関係なく、やっぱり映画は監督のものですから。アニメの印象とはまた違いましたけど、どっちも素敵でした」

世界で愛されてほしい実写版

『秒速5センチメートル』新ビジュアル - (C) 2025「秒速 5 センチメートル」製作委員会

 また、自身の楽曲への反応に重ねて、国際化への思いも明かす。「実写版が誕生する前、北京のライブで『One more time, One more chance』と『空へ』(『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』主題歌)にすごく大きな拍手をいただいたんです。やはり、アニメに関わる曲はみなさん知ってはるんですよ。日本のアニメは優秀ですから」と自身の手ごたえを語り、「今作も『世界に羽ばたいていけるような』と試写の時に関係者の方がおっしゃっていましたが、本当に世界の方々にも愛されるといいなと思います。アニメ版を観た方に『またあの曲かかっとるやんけ!』と言われたりして」と冗談めかした。

 完成した映画を観た山崎は、何を感じたのか。「人の出会いと別れは、成長でもありますけど、残酷でもあるなと思いました。いろいろなところでリンクして、いろいろなところですれ違う。人生は、添い遂げるとか、夫婦から家族になってという、それだけではないんだなと思いました」

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 俳優陣の芝居についても「どなたも素敵なお芝居をされていました」と感嘆。「特に、プラネタリウム(科学館)の館長さん役の吉岡(秀隆)さんが印象的でしたね。松村さんはもちろん、種子島の女子高生(森七菜)の涙や、幼い2人のところもよかったです」と心に残るシーンを挙げていた。

 中には、本作で初めて「One more time, One more chance」を聞く若い観客もいるだろう。山崎は「実写を観た方が、アニメも観て、さらに『月とキャベツ』までさかのぼってくれたりしたら、面白いかもしれません」と楽曲つながりの楽しみ方を提示する。そのように楽曲はこれからも広まり、世代を超えて愛されていく。山崎は「作者冥利に尽きます」と柔らかくほほ笑んでいだ。(取材・文:早川あゆみ)

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