「牙狼<GARO>」雨宮慶太が描くヒーローの条件 チームで鍛えた“強くて頼もしい”大河像

特撮ドラマ「牙狼<GARO>」シリーズ20周年記念作となる『劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』』(10月17日全国公開)。初代主人公・冴島鋼牙の父である新ヒーロー・冴島大河の活躍を描く本作で、シリーズの生みの親である雨宮慶太監督は、スタッフ一丸で“強く頼もしい”ヒーローを生み出した。新規ファンに向けて「これを一本目の『牙狼<GARO>』にしてほしい」と熱く語る本作について、主演・北田祥一郎の起用理由から理想のヒーロー像まで、雨宮監督が語った。
【画像】『牙狼<GARO> TAIGA』キャラクター紹介【まとめ】
2005年にスタートした「牙狼<GARO>」シリーズは、人の“陰我”に取り憑く魔獣・ホラーと戦う魔戒騎士たちの物語。劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』では、シリーズ1作目「牙狼<GARO>」(2005)の主人公・冴島鋼牙の父で、魔戒騎士の最高位「黄金騎士ガロ」の称号を受け継ぐ戦士・冴島大河の若き日の戦いを描く。
強い者に惹かれる
それぞれ思いは違えど、誰もが守るべき者のために身を挺して戦う主人公を描いてきた「牙狼<GARO>」シリーズ。北田が演じる大河も、ホラーに対しては容赦ないが、包み込むような温かさで人を守る、まさに“強くて頼もしい”ヒーローだ。
「悩めるヒーローはあまり好きじゃないんです」という雨宮監督は「もちろん悩んでもいいのですが、最後は強い者が好きというか。僕はずっと、“強いヒーローを描くとは何か”を考えている気がします。自分も含めて、人間には“強いものを見たい”という欲求がどこかにあるのかな」と語る。
ただ、雨宮監督が言う“強さ”とは、俳優の演技だけではなく、監督の示すゴールを共有したスタッフ全員で目指す、総合芸術としての表現だ。「“強いヒーロー”を造形するためには、強い芝居が、強いカメラワークが、強いライティングが見たいわけです。監督と演者だけはなくて、カメラマンや照明、アクション指導、衣裳、メイクといったチームが僕の描いたイメージを共有し、全てが集うことで“強い”という表現になる。スタッフ全員で生み出すものなんです」
「牙狼<GARO>」チーム全員で生み出す強さ
北田を大河役に抜てきした理由は、雨宮監督が描いた大河のイラスト「ほぼそのまま」だったから。「最初はベテランの方にお願いしようと話していたのですが、一度フラットに見てみようとなり、北田くんなら僕の考える大河像が表現できると思った。これは今まで僕が撮った『牙狼<GARO>』も常にそうです。主役はまず、僕の絵ありき。演者も含めたチーム全体で、そこを目指して表現をギュッと固めて作っていく。だから『牙狼<GARO>』は常にチーム戦なんです」
「もちろん、観客の皆さんには“俳優が素晴らしい”と受け取っていただいて大丈夫なんです。ただ、みんなの代わりに、その過程はチームで作っていると言えるのは僕しかいない。『北田くんがかっこいいのは、全員の力があるからですよ』と言っておかないと、怒られちゃうので(笑)」
CGナシ!肉体を駆使したアクション
ヒーローの魅力と共に「牙狼<GARO>」シリーズを支えてきたのが、キャラクターの肉体を駆使した生身のアクションだ。雨宮監督は「『牙狼<GARO>』って一見、魔法的な表現……文字が浮かんだりビームっぽいのが飛んだりするイメージがあるかもしれませんが、実はあまり好きじゃないとうか、ああいう“光もの”が飛ぶ演出は実は大っ嫌いなので(笑)。僕のやってる『牙狼<GARO>』ではないんです。バリア的に使うことはありますが、基本は剣や刀の戦い。魔法的な表現も極力なくしてもらって、あっても“光もの”ではなく、霧とか影とか水といった、現象として描写するようにしています」とこだわりを明かす。
「今回もアクションシーンはほとんどCGを使っていません。鎧の脱着シーンぐらいですかね。あとは全部スーツで撮っているので。あえてアナログで撮ろう、という指針はありました」
その言葉の通り、本作でも俳優陣の肉体を駆使した力強いアクションが展開するが、ここでもチーム力が発揮された。「基本的にアクションに関しては、鈴村(正樹)監督にアイデアを出してもらって、そこから僕が選んでいく形。そこでも、大河のキャラクターをリスペクトして作ってくれているので、所作などについてもしっかりとつけてくれましたね」
この映画を最初の「牙狼<GARO>」に
もちろん、かつて大河を演じた渡辺裕之さんもチームの一人。雨宮監督は「“渡辺さん=大河”ということをスタッフに強要していないし、現場でも言わなかったです」と明かす。「大河は僕が造形したキャラクターで、渡辺さんもそれを表現してくださった。今回も、僕が自分で台本を書いて監督をするのであれば、あとは(チームがゴールを目指すことで)大河を描けると思っていたので、渡辺さんが作ってくれたものをあえて意識させることはしませんでした」
それだけに、大河という“新ヒーロー”の物語の続きも期待をしたくなるが、雨宮監督は「構想は今のところないですが、新しい物語の可能性はあるんじゃないですかね」と語る。「今回は続編につなげようとかを考えず、一本の映画として完結させたから良かったのかもしれないと思うんです。続くことを前提にして映画を撮ると、何か濁る感じがするというか。ただ、皆さんが観終わった後で『もう少し先を観たい』『またキャラクターに会いたい』と思ってくれたら、『TAIGA』の未来にレールが敷かれたということになるので、『違う形でやろうか』という話は出てくるかもしれません」
そのうえで雨宮監督は「今回は『牙狼<GARO>』を観たことがない人にもぜひ観てほしい」と語る。「もし『牙狼<GARO>』は知っているけどまだ観ていないという方は、過去作からではなく、この映画を一本目にしてください。どの作品よりも入りやすく、一番見やすいと思うので。これだけで十分満足してもらえますし、その先には、他の『牙狼<GARO>』を探すという至福の旅が待っているので、本作から観てもらうのを強くおすすめします」。(編集部・入倉功一)
劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』は全国公開中


