『牙狼<GARO>』トラウマ級ヴィランの魅力 雨宮慶太の描く悪はなぜ美しいのか

「牙狼<GARO>」シリーズ20周年記念映画『劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』』(全国公開中)を完成させた雨宮慶太監督が、自身が描いてきた、美しくも恐ろしい“ヴィラン”(悪役)の魅力について語った。
【画像】冴島大河の新たな戦い!『牙狼<GARO> TAIGA』キャラクター【まとめ】
「牙狼<GARO>」は、人の“陰我”に取り憑く魔獣・ホラーを討滅するため、代々受け継がれし鎧を召還して戦う魔戒騎士と、その最高位「ガロ」の称号を受けた黄金騎士の戦いを描く特撮シリーズ。劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』では、初代主人公・冴島鋼牙の父親・冴島大河(北田祥一郎)の若き日の戦いが描かれる。
雨宮慶太作品といえば、一流のイラストレーター/キャラクターデザイナーでもある、監督自身が生み出すトラウマ級の異形たちも魅力のひとつ。「牙狼<GARO>」シリーズでも、20年の間に数々のホラーが生み出され、圧倒的なディテールと、グロテスクでありながら見るものを魅了する美しさで作品を彩ってきた。
雨宮監督は、自身が描く悪について「一貫して美しい造形の敵が好きなんです。“本当に怖いものは美しい”というか。毒グモや毒蛇のカラーリングなどにも惹かれる。畏怖や強さが具現化したものが悪とすると、そこに着地するんです」と語る。
「僕は抵抗のあるものは描けないんですよ。これは価値観の問題で、とにかくひどくてクズみたいな悪は描く価値がないと思ってしまう。価値があると思うのは、残忍で強いけど痺れるような悪。だから、僕の作品は悪役が人気になったりもするんです。もっとゲスな感じだったら、そんなに人気は出なかったと思います。悪でも美学があるという点は意識しています。そうすると、映画的な“深み”は出ないかもしれませんが、そういう部分は他の監督の作品で素晴らしい悪が描かれていますから」
劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』のメインヴィランは、人間を守護する聖獣を喰らい、その大いなる力を手にしようと暗躍するホラー・蛇毒(じゃどう)。喰らった人間の記憶や能力を我が物にして力を蓄える邪悪な存在を、「仮面ライダーエグゼイド」(2016)などに出演する瀬戸利樹が妖艶に演じている。どこか女性的な雰囲気が漂うこの悪役を演じるうえで、雨宮監督が伝えたのは「美しく」だった。
「瀬戸くんには“美しく”あるように伝えていました。蛇道というのは、本来は自分がなれるはずだったものになれなかった、僕にとって描く価値がない悪のギリギリ手前、一歩踏みとどまっているキャラクターというか。そうなった理由は映画の中では描かれていないんです。瀬戸くんには、そうした深いところまで伝えたかは記憶にないんですけど、彼は顔も美しいし非常に勘がいいから、上手くやってくれましたね」
また、その蛇毒に力を狙われるのが、風の力を司る聖獣・白虎。人間の世界を愛する白虎は、四神の魂を納めた「羅針盤」を勝手に抜け出してしまう。常におおらかで、強さと優しさを兼ね備えた“気持ちのいい男”を、波岡一喜が演じている。
ヤクザ映画をはじめ、悪役を演じることも多い波岡だが、雨宮監督は「僕はどちらかというと爽やかなイメージがあったんです。一度、『牙狼<GARO> ーGOLD STORMー 翔』でゲストに来ていただいた時も、すごくチャーミングな方だったので。もちろん、ゲスい役もはまっているんですけど、負の要素が一個もない一面も絶対にあるのに、どうしてそういう作品がないのかなと。実際にやってもらったら、僕が思う、波岡さんの良さが凝縮された役になったので、波岡さんが白虎でよかったと思っています」(編集部・入倉功一)


