伊藤英明、 岡田准一の愛に決死の覚悟「もうどうなってもいい」Netflixシリーズ「イクサガミ」で世界に挑む

今村翔吾の同名小説を原作に、藤井道人がメイン監督を務め、明治時代を舞台にした壮大なバトルロワイヤルエンターテインメントに仕上げたNetflixシリーズ「イクサガミ」。本作で、プロデューサー、主演、アクションプランナーの3役を担当した岡田准一と、作品一の荒くれ者・貫地谷無骨を演じた伊藤英明が、本作ならではの挑戦、互いへの信頼、そして世界に発信する日本のアクションの未来について語り合った。(取材・文:磯部正和)
【画像】強き男たち! 岡田准一×伊藤英明「イクサガミ」インタビューカット
2人の激突で完成するアクション
明治11年。困窮した侍たちに示されたのは、莫大な賞金が懸かった謎の遊戯「蠱毒〈こどく〉」への参加という道だった。「イクサガミ」は、それぞれの思いを胸に、全国から集められた292人の猛者たちが、生き残りの席を目指して命を懸けた戦いに身を投じていく、空前絶後のバトルロワイヤルエンターテインメントだ。大切な者のために戦う主人公・嵯峨愁二郎と、戦いを求めてゲームに参加した無骨。岡田と伊藤が、対極に位置するキャラクターで火花を散らす。
ーー岡田さん演じる嵯峨愁二郎と、伊藤さんふんする貫地谷無骨は全く違うキャラクターですが、お互いの役柄を見て、ご自身の役の骨格を意識した部分はありましたか。
岡田准一(以下、岡田):僕は作り手としての側面もあるのでコンセプトからお伝えすると、無骨と愁二郎は2人で1つの“表と裏”のような存在として作っています。2人とも戦争被害者で、愁二郎は守るべき家族がいたからある程度まともに生きられたけれど、救う人がいなかった無骨は違う方向に進んでしまった。同じ境遇でありながら生き方が変わったことで、全く違う人間になった2人に見えるようにしたかったんです。
殺陣に関しても、愁二郎は縦回転、無骨は横回転の動きを多めに使っていて、2人が合わさることで球体になる……ということを裏コンセプトにしています。愁二郎は、紙一重で無骨になっていたかもしれない男なんです。
ーー伊藤さんは、そういったコンセプトを岡田さんから聞いた上で撮影に入られたのでしょうか。
伊藤英明(以下、伊藤):コンセプトは聞いていましたし、この作品で自分がどういう役割を担うかということも岡田さんから説明を受けていました。僕自身は、無骨は強者を求めて時代に取り残され、その死に場所を愁二郎という存在に見たのではないか、という解釈で演じていました。
ーーお二人のコンセプトをお聞きすると、アクションシーンの見え方が変わりますね。岡田さんが伊藤さんに無骨役を託す際に、具体的に意識されたことはありますか。
岡田:作品の核となるものを、コンセプトを含めてしっかり作る必要がある。それが今回の僕のスタイルでした。「台風の目のような男であってほしい」と願えば、そういう無骨から破壊が始まっていくようなカットを撮ったりはします。「実はコンセプトで作っているんだよ」ということが、どこかで染み込むはずだと信じています。
岡田准一の熱意に「もうどうなってもいい」
ーー伊藤さんは、そうしたキーワードを元に想像しながら、現場では瞬発力で動いていく感覚でしたか。
伊藤:それもありますし、何よりこのお話をいただいた時、岡田さんの持つエンターテインメント性に飛び込めることがものすごく楽しみでした。一方で本当に、岡田さんは大変だったと思います。
岡田:一つ一つのシーンを撮り切れるのか、というレベルでしたからね(笑)。でも、乗り越えましたね、僕たち(笑)。
ーー岡田さんはアクションプランナーも兼任されています。ご自身が演じながら全体を見る客観性は、どのように両立させているのですか。
岡田:それはもう特技ですね。自分と、相手と、カメラが何を撮っているか。この3つの目線がないとOKかどうかはわかりません。カメラマンが何を撮っていて、このカットでは何を欲しているのかを理解した上で動きます。「ここで編集点がこうなるから、ここはミスしても大丈夫」といった判断もします。長年やってきているので、プレイヤーとしてだけでなく、様々な目線を持って現場にいる必要があります。
ーー伊藤さんは無骨を演じる上で、フィジカル面でどのような準備をされましたか。
伊藤:撮影の半年以上前から、主にアクションシーンの稽古をしていました。最初は、自分がうまく動けるのか、納得のいく見せ方ができるのかと悩んだ時期もありましたが、以前『燃えよ剣』でご一緒した時から、岡田さんの作品への熱量や責任感の強さを痛いほど感じていました。映画界の未来まで考えて行動されている方。その方が中心となって作る作品なら大丈夫だ、という信頼感が深まっていきました。
口で説明するのが難しいくらい大変な現場でしたが、大きな壁を越えるたびに「これはものすごいものになる」と確信できたので、あとはもう岡田さんに身を預ける覚悟でした。大げさでなく「どうなってもいい」という思いでやっていました。岡田さんは単なる俳優やプロデューサーではなく、アクションのプランニングから安全確保、予算や時間の管理、役者の疲労感や役の表現まで、全てを背負って、しかも楽しんでいらっしゃる。その姿にエネルギーをもらえました。
実は、撮影中に僕のせいで岡田さんにご迷惑をおかけしてしまったのですが、それでも「伊藤さん、大丈夫だ。どんどんぶつかってきてくれ。アクションは愛だ」と背中を押してくださった。本当に偉大な男だなと思いました。ですから、何としてもこの作品をたくさんの方に届けたいんです。
日本のかっこよさを世界へ発信
ーー愁二郎と無骨の戦いで、特にこだわった点はありますか。
岡田:「場が戦う」ということをすごく大事にしました。演者が戦っているだけでなく、作品として「場」をどう動かすか。昔の日本の時代劇はそれが上手かった。風を吹かせ、雨を降らせる。今回は人も300人以上動かすなど、とにかく場全体をどう動かしていくかにこだわりました。
そして何より、アクションができることよりも、芝居ができる役者であることが大事です。キャラクターを活かすのは動きではなく、芝居。動きは芝居に染み込んでいく付加価値のようなものです。その点、皆さんが熱を持って演じてくださったからこそ、動きに繋がる殺陣が作れたのだと思います。
ーーこの座組だからこそできた作品なのですね。本作が世界に配信されることについて、どのような意義を感じていますか。
伊藤:我々日本人にとって時代劇は身近なものですが、今の洗練された映像技術と、岡田さんのエンターテインメント性が融合し、それを藤井(道人)監督がしっかりと切り取っている。日本が誇るクリエイターたちが圧倒的なスケール感で臨んだ作品なので、間違いなく世界に広がっていけると思います。『SHOGUN 将軍』のヒットもあり、日本の歴史や文化、時代劇のアクションに注目が集まっているので、多くの方に届くと信じています。
岡田:世界に対するものづくりという意味では……自分がやれることをやって、今の日本のクリエイターたちの力を世界に見せつけたい。それがこの仕事をやっている意義だと思っています。日本の伝統や時代劇をどう未来につなげていくか、ということを常にテーマにしています。海外では「イカゲーム」と比較されることもありますが、また違う感動を感じていただければと思っています。
今回は、「流行りの色がこれだから」「海外の基準に合わせよう」という考えは排除しました。自分たちのフィルターを通して「自分たちが一番かっこいいと思う色味で勝負しよう」というのが、スタッフ間の合言葉でした。自分たちが信じるものをちゃんと作った結果がこれなんだ、と。それが世界に届けば最高ですね。
Netflixシリーズ「イクサガミ」は世界独占配信中


