『マーティ・シュプリーム』主人公の伝記が執筆されていた!「旅行記だけで映画を1本撮れるほど」

映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のジョシュ・サフディ監督が来日時にインタビューに応じ、ティモシー・シャラメと共に最低にして最高な主人公マーティ・マウザーというキャラクターをどのように作り上げていったのかを明かした。
マーティは、「卓球で世界一になる」という1950年代のアメリカでは誰にも見向きもされないような夢を実現するため、ひたすら利己的に人生を駆け抜けていくキャラクター。にも関わらず、彼が放つ圧倒的なエネルギーには抗いがたい魅力があり、憎み切れないところがある。
サフディ監督によると、初めて会った時のティモシーは「絶対にスターになる」という確固としたビジョンを持っており、それがマーティの本質とぴったり重なる部分だったのだという。そしてティモシーと実に7年という時間をかけて話し合い、マーティのキャラクターと物語を発展させていった。
「どんな俳優に対してもそうだが、まずは互いの人生について語り合うんだ。例えば、マーティと母親の関係について僕がアイデアを出すと、そこから僕たち自身の母親との関係の話になる。その時、僕はドキュメンタリー作家のような視点で彼の話を聞き、そこからインスピレーションを得てキャラクターに反映させる。彼がふと漏らした“母親にはこういう面があるかもしれない”といった考えを、物語に組み込んでいくんだ」
「その過程を通して、僕は膨大な数の写真や音楽、映像を共有する。ただし、映像というのはフィクションの映画ではなく、ドキュメンタリーやリサーチ資料。この作品のプロデューサーであり僕の妻でもあるセーラ・ロセインがリサーチ部門の責任者なのだが、彼女が現実世界から見つけ出してきた写真や映像は、ティモシーの役づくりにとって非常に大きな助けになった」
それだけでなく脚本家でもあるサフディ監督は、各キャラクターのために、彼らが誕生した瞬間から映画が始まる直前までの詳細な“伝記”を書いたりもする。マーティの伝記ももちろんあり、そしてそれはかなりの量に及ぶ。
「そのプロセスの中で、彼が15歳の時に恋をしていた女優は誰か、どんな音楽を聴いていたか、レイチェル(オデッサ・アザイオン)と子供の頃にどう出会い、どう関わってきたか、といった細部を詰め、彼が旅した場所や旅先で起きた出来事まで書き出していくんだ」
「僕が書いた“15歳の時のシカゴ旅行”だけで、映画が1本撮れてしまうくらいの量だよ(笑)。ティモシーがそうした“キャラクターが歩んできた人生”を聞くと、役への理解がぐっと深まる。幼少期に負った深いトラウマ──父親が去り、ギャンブルに溺れ、タクシーを得てそれを失い、フィラデルフィアへ移り、そこで別の家庭を作って、父親を永遠に失ったこと。それが母親との生活にどう影響し、母親の鬱や息子への執着にどう繋がったか。そうした背景を共有することで、彼はなぜマーティがそこから抜け出さなければならなかったのかを、心から理解できるようになるんだ」とティモシーとの密接な共同作業について語っていた。(編集部・市川遥)
映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は公開中


