『アベンジャーズ/エンドゲーム』は何がスゴかったのか “ヒーロー映画の最高峰”誕生の軌跡

全世界歴代興行収入第2位を記録した映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)が、新映像を追加した特別バージョン『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』としてスクリーンに帰ってきます。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集大成である本作は当時、なぜ世界中の観客を虜にしたのか。改めてその軌跡を振り返ります。(文:杉山すぴ豊)
【動画】伝説再び…『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』予告編
マーベル・スタジオが仕掛けたクロスオーバー超大作
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の醍醐味は、個々の作品の魅力もさることながら、やはりヒーローたちが共演するクロスオーバーにあります。その魅力を最初に味わわせてくれたのが2012年の『アベンジャーズ』でした。2008年の『アイアンマン』を筆頭に(但し日本では『インクレディブル・ハルク』の方が先に公開)、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカの映画を公開し、彼らが結集するのが『アベンジャーズ』。そのダイナミックさ、イベント感にワクワクしたものです。まさに“待ってました!”と叫びたくなると同時に、MCUを仕掛けるマーベル・スタジオの豪胆ぶりに驚かされました。
大ヒットした『アイアンマン』をシリーズ化させ、その続編の中でソーやキャプテン・アメリカをキチンと登場・紹介するという安全策をとることも出来たハズです。極論を言えば『アイアンマン4:アベンジャーズ・アッセンブル』という選択肢もありえたでしょう。しかし『アベンジャーズ』の前に『インクレディブル・ハルク』『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』を成功させねばというリスクというかタスクをおって、この大クロスオーバーに臨んだことは本当にすごい。
そして、この醍醐味を再び味わうことが出来たのが2018年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でした。『アベンジャーズ』以降、MCUはさまざまなヒーローをスクリーンに登場させてきました。そうしたヒーローたちが、また一堂に会する訳です。
ここで特筆すべきは、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとスパイダーマンでしょう。MCUの中でガーディアンズの人気は非常に高い。しかし、映画化される以前は“知る人ぞ知る”的なヒーロー・チームでした。一方スパイダーマンは “みんなが知っている”超人気ヒーローですが、マーベル=ディズニー以外の映画会社であるソニーピクチャーズが映画権を持って先行独自展開をしており、MCUには登場できませんでした。
そう、マーベル・スタジオはMCUを使って知られざる素晴らしいヒーローたちにもスポットを当てて、ソニー・ピクチャーズと話をつけてこの超人気キャラをなんとかアベンジャーズと共演できるようにしました。ファンが望むMCUにしたいというマーベル・スタジオの気概を感じます。こうして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』となるわけです。
本作も素晴らしい作品でしたが、多くのMCUヒーローが登場するけれどまだ全員集合ではないのです。宇宙でのアイアイマン、スパイダーマン、ドクター・ストレンジ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー組の一部によるサノス戦。地球(ワカンダ)でのブラックパンサー、ブラック・ウィドウ、ヴィジョン、ワンダ、ブルース・バナー(ハルクではない)、スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカではない)、ファルコン、ウォーマシーン、バッキー、ソー、ロケット、グルートによるサノス軍との戦いと見せ場は2つに分かれています。
そしてこの映画の事実上の主役はサノスなのです。監督のルッソ兄弟が本作の事前インタビューで「これはハイスト映画に近いと思う」的なコメントをしています。ハイスト映画とは強盗や泥棒側が主役の、彼らがいかにお宝を強奪するかに重きをおいた作品を意味します。従ってヴィランであるサノスがインフィニティ・ストーンというお宝を奪い目的を果たす=勝利する映画です。
アベンジャーズ、アッセンブル!『エンドゲーム』の感動と驚き
そしてこの興奮と衝撃の1年後に公開されたのが『アベンジャーズ/エンドゲーム』です。ファンにとって再び“待ってました!”と叫びたくなる作品でした。その理由は2つあるのですが、まず前作でアベンジャーズやヒーローたちはサノスに負けてます。そして世界、宇宙はとんでもないことになってしまった。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は名作だし、サノスにも共感できます。しかしMCUはヒーロー映画! ヒーローたちが強敵を倒し世界を取り戻す、を観たい!
そしてもう一つが、ヒーローたちがすべて集まるということです。『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』は確かにヒーローたちが沢山登場するけれど、前述のとおりすべて一緒に集まるわけではない。アントマン、ワスプ、そしてキャプテン・マーベルは登場しません。また、スティーブはキャプテン・アメリカ、バナーはハルクとして活躍しません。これらのヒーローたちがついに集結するのです!
ここで伝説のセリフがついに発せられます! AVENGERS ASSEMBLE! (アベンジャーズ、アッセンブル!)これはコミックで、おもにキャプテン・アメリカが言う名セリフ! アベンジャーズ、集合! みたいな意味で彼らがアクションを起こすときのかけ声みたいなものです。
実は2012年の『アベンジャーズ』の時に、このセリフが出ると思っていたのですが出ず。その後匂わせはあったものの発せられることはありませんでした。そのセリフが、最高のタイミングで登場。マーベル・スタジオはずっとこのセリフをどこで出すのか検討していたのでしょうか? ということは2012年の『アベンジャーズ』から7年後の本作を見越していたのか? ここも驚かされます。
他にも、ここまでのMCUにつながる設定・伏線がうまく回収されています。一例をあげると『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』でホークアイ/バートンとブラックパンサー/ティ・チャラの出会いは敵対的なものでした。バートンの名乗りにティ・チャラは否定的なリアクションをします。しかし本作ではティ・チャラは彼の名をちゃんと呼び、助け合います。
そして『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へ
とにかくヒーロー映画として最高のカタルシスを約束してくれる『アベンジャーズ:エンドゲーム』ですが、ヒーローたちが最強ヴィランを倒して大団円というわけではありません。ここから次のMCU展開につながるいくつかの設定がちりばめられているのです。
まず、この映画のヒーローたちの目的はサノスを倒すことではなく、あくまでサノスによって銀河の生命の半分が消された世界を元に戻すことでした。そのために時空を超えて、さまざまな時代からインフィニティ・ストーンを集めます。しかしその途中で、ブルース・バナーはエンシェント・ワン(ドクター・ストレンジの師匠)からこうした行為をたしなめられます。
MCUの出来事はアース616を舞台にしていますが、タイムトラベルして他の時間軸に出向きそこでなにかを変えることはその時間軸にひもづく世界(アース616から見ればパラレル・ワールドの関係になる世界。こういうパラレルワールドがいくつも存在する状態をマルチバースと言います)に影響を与えることに他ならないと。バナーはエンシェント・ワンに対し、ストーンは使用したらそれぞれの元の時代にちゃんと戻すと約束します。
確かにこの約束は守られたように見えますが、本当にうまくいったのか? アース616が本来の運命である“サノスによる銀河の間引き”を受け入れず、他の時間軸に干渉してまでこれを回避したことでなにかマルチバース全体に大きなゆがみが生じたのではないか? それが、この冬公開の最新作『アベンジャーズ/ドゥームズディ』につながるということも考えられるわけです。
だからこそ、ルッソ兄弟は『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』を観てほしいと言っているのでしょう。『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』には新たなシーンが追加されるらしいですが、この新映像こそ、その答えでしょうか。
そう考えると『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』は、“『アベンジャーズ:ニューゲーム ビギンズ』”なのではないかと思います。MCUファンにとって今回の『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』は『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の予習的意味合いがあります。もちろんそれは正しいですが、改めてヒーロー映画の一つの頂点である本作を劇場の大スクリーンで観ることが出来る素晴らしい機会だと思います。
ヒーローたちがなぜ戦うのか? 決してサノスへの復讐心ではありません。ただ世界を取り戻したいだけ、それはサノスの一方的な正義によって愛する人・大切な人たちとの日常を突然引き裂かれ奪われた、銀河にいるすべての家族のためなのです。この作品において何度も出てくる言葉の一つは“家族”なのです。2019のあの時の感動、そしてこれから始まる新たな期待を胸にぜひ劇場にアッセンブルしてください。
杉山すぴ豊 プロフィール
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、「スクリーン」誌等で発信。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。東京コミコンのステージプロデューサー兼MCも務める。最近では『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本語吹替版の監修も担当。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。
『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』は9月23日(水・祝)から10月8日(木)まで期間限定公開
『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』は12月18日(金)日米同時公開



