少年以外全部CG!『ジャングル・ブック』映像で振り返る驚異の裏側!

「少年以外、全部CG」の言葉通り、生命にあふれるジャングルの全てをVFXで表現した感動のアドベンチャー大作『ジャングル・ブック』。映画の歴史に名を残すに違いない驚異の視覚効果はどのように作られたのか。驚異のメイキング映像と現地スタジオで取材した制作者たちの証言でその制作過程を振り返る。(編集部・入倉功一)
■驚異の映像を作り上げた人々

本作のVFXを担当したのは、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2013)でアカデミー視覚効果賞を受賞した実績を誇る、イギリス・ロンドンに本拠地を置くVFX制作会社ムービング・ピクチャー・カンパニー(MPC)だ。

作業は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの視覚効果で知られるWETAと共同で行われ、MPCは主に動物たちの精密なアニメーション表現や、主人公モーグリが駆け回るジャングルの環境作りに注力した。

本物のジャングルでロケをしたかのような本作だが、実際には全編をロサンゼルス(LA)のスタジオで撮影。主人公モーグリ役のニール・セディは、ブルーバックのセットで、存在しないジャングルや動物を想像しながらの演技に挑んだ。

「監督はモーグリ役に本物の子役を起用することにこだわりを持っていました」と語るのは、メガホンを取ったジョン・ファヴロー監督の意向を基に、アーティストたちへの指示や技術的な問題解決にいたるまで、CG映像に関する全てを統括したCGスーパーバイザーのエリオット・ニューマンだ。

「実際、モーグリもCGにしてしまえばあらゆる制約から解放されますし、本物の人間を表現することはCG制作における至高の目標だと思っています。しかし私たちはあまりに人間を見慣れているため、細かい表情の違和感などにすぐに気がつく。『不気味の谷現象』(ロボットやCGが人間らしくなっていく過程で、ある段階から人がそれに嫌悪感を抱くようになる現象)というもので、それを解決するのは容易なことではありません。本作でモーグリを実写で撮った監督の決断は正しかったと言えるでしょう」(エリオット)
そのモーグリとフルCGで表現されたジャングル・動物たちが全く違和感なく融合している点も驚異的。モーグリが育ての親であるオオカミのラクシャに別れを告げるシーンでモーグリがラクシャのたてがみをなでる姿は、本物の毛皮に触れているようにしか見えない。

「数多くの映画を手掛けてきたことで、MPCは経験豊かなチームに恵まれているんです。このシーンについても、チームは計画段階から難しいショットになるとわかっていました。結果として僕らはモーグリの手だけをCGに置き換えて、モーグリの指と動物の毛が違和感なく触れ合うよう見せることができた。これは、僕らが本作で最も誇らしいと思うショットの一つですね」(エリオット)