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映画・ゲーム・女優 三つの世界がひとつになる!ダイアン・クルーガー×ファティ・アキン×小島秀夫『女は二度決断する』特別鼎談

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 ベルリン、カンヌ、ヴェネチア、世界三大国際映画祭での受賞経験を持つドイツの名匠ファティ・アキン監督が、ワールドワイドに活躍する実力派女優ダイアン・クルーガーを迎えた最新作『女は二度決断する』がいよいよ4月14日から日本公開される。人種差別主義のドイツ人によるテロによって、愛する家族を奪われた女性の決断を描き出す本作で、主人公カティヤを演じたダイアンは、カンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得するなど、高い評価を受けた。

 アキン監督の作品に魅了され、大ファンであることを公言してきたのが、人気ゲーム「メタルギア ソリッド」シリーズなどで知られる小島秀夫監督だ。そしてこのたび、旧知の仲であるダイアンを交え、アキン監督との対面が実現。互いをリスペクトし合う3人の才能による鼎談(ていだん)は、熱い盛り上がりを見せた。(取材・構成・文:壬生智裕・編集部・入倉功一/写真:永遠)

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『女は二度決断する』鼎談動画

-小島監督とアキン監督は初対面だそうですが、小島監督は『50年後のボクたちは』を観て、アキン監督の大ファンになったそうですね。

小島監督:『50年後のボクたちは』(2017)は、去年のベストテンに入るくらいお気に入りの映画となりました。それからアキン監督の映画をさかのぼって観たんです。『そして、私たちは愛に帰る』(2007)には、とにかくビックリさせられました。民族やマイノリティーの問題を扱っている映画なんですけど、遠い国の話かと思いきや、日本人の僕でもすごく共感できる。まさに今観るべき映画だと思いました。

ダイアン:わたしも、もともとファティの作品の大ファンだったんです。

-小島監督から見たアキン監督の魅力とは?

小島監督:アスガー・ファルハディ監督(『別離』『セールスマン』)や、ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『灼熱の魂』『メッセージ』『ブレードランナー 2049』)の初期作品のような印象を受けました。民族やマイノリティーを扱っている中での横櫛で家族を貫いているんで、どこの国の人でも共感できると思うし、今、世界で起こっていることをわかりやすく僕らに教えてくれる。それが作品によってはコメディーだったり、シリアスだったり……となるところもすごいところだと思います。年齢も僕よりも10歳ぐらい若いんで、嫉妬してしまいますよ(笑)

アキン監督:全くもって小島さんの言う通り! というのは冗談だけど(笑)。でもそう言っていただけることは光栄です。映画づくりをしている時は、遠く離れた日本でそういう風な感想があがるなんて想像もしていなかった。ただ、映画というのは視覚的なコミュニケーションだと思うんです。僕の生まれ育ったハンブルクで作ったこの作品を、日本の小島さんが完璧に理解してくれている。それこそ視覚的なコミュニケーションのあるべき姿じゃないかと思う。うれしい言葉をありがとうございます

-そんなアキン監督の新作『女は二度決断する』は、いい意味で期待を両断する作品である、と小島監督はおっしゃっていました。

小島監督もダイアンの演技に圧倒されたという - 『女は二度決断する』より

小島監督:3つの家族が登場する『そして、私たちは愛に帰る』(2007)もそうでしたが、アキン監督の映画には“3”という数字がしばしば登場します。映画的にもビジュアル的にも、“3”というのはいい。そして、『女は二度決断する』も3章構成となっています。1章は「家族」というタイトルで、いろいろな形の家族の喪失が描かれます。そして2章は「正義」というタイトルの法廷劇。そして3章は「海」というタイトルなんですが、アキン監督の映画には必ず海が出てくる。これらは各章ごとに演出スタイルが変わっていて、僕らはダイアンさん演じるカティヤにどんどん感情移入をしながら、物語を味わっていくわけですが、客観的に見ると3章構成というものはとても頭がいい構成なんですよね。

-3章構成であることに注目であると。

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『女は二度決断する』について「10時間くらいしゃべっていられます」と小島監督

小島監督:ちょっと俯瞰(ふかん)で観てみると、違った見え方がするよ、というのが今回のテーマだと思うんです。だからこの映画は2回、3回と観た方がいい。これはあくまで僕の解釈なんですが、『女は二度決断する』というタイトルがありますが、実は三度決断しているんじゃないかと思うんです。例えば……(※物語の核心に触れる鋭い指摘があったが、ネタバレになるため中略)。これらのことがすごく複雑に絡み合っているのに、非常にわかりやすくて頭のいい脚本となっている。とにかく彼は天才なんですよ。これについては、まだまだ10時間くらいしゃべっていられますね(笑)。

小島秀夫監督、ダイアン・クルーガー、ファティ・アキン監督

アキン監督:僕の家族の中では、息子が一番のゲーマーなんですけど、僕の映画は全然評価してくれない。でも日本の天才ゲームクリエイターである小島さんが、こんなにも僕のことを天才だと呼んでくれている。彼がそれを知ったら、これからは僕の言うことも聞いて、宿題をしてくれるようになるかな(笑)。

ダイアン:(笑)。

アキン監督:それはともかく、彼女の最後の選択の解釈というのは、まさに小島さんがおっしゃった通りなんですよ。本当にうれしいですね。この作品の為に、世界中、いろいろなところを旅してまわったんですが、がっかりするような質問を受けることもしばしばあって。でも小島さんはきちんと本質を理解してくれている

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「小島さんはきちんと本質を理解してくれている」とアキン監督

ダイアン:小島さんの作品は本当に素晴らしいんです。(小島監督の新作ゲーム)「DEATH STRANDING」のトレーラーを見せてもらったときも、本当に素晴らしいと感激しました。キャラクターの表情も豊かだし、ディテールも豊かで、細かいところまでこだわって描かれていた。そして何よりも、パフォーマンスに対する繊細さが感じられるような作品を作られる方だと思ったんです。わたし自身はゲーマーではないですが、予告編だけで頭が爆発してしまうほどの衝撃でした。その時にも言ったんですが、小島さんは長編映画を撮るべきだと思うんです。

-ダイアンさんの演技はいかがでした?

小島:演技と言うか憑依(ひょうい)ですよね。(主人公の)カティヤそのものというか。よく映画では、悲しさを表現する時に「わたしは悲しい」というセリフを言わせたり、周囲の登場人物に「あの人は悲しそうだね」とセリフを言わせたりする。でもこの映画のダイアンさんは、ただひたすらタバコを吸っている、そのたたずまいだけで悲しみや痛みが伝わってくる。この演技は要求しようとしてもなかなか引き出せるものではない。本当にすばらしい女優さんだと思います。今度は、ぜひ僕のゲームにも出てくださいよ。

ダイアン:ありがとう、すごくうれしいです。前回、小島さんとはLAで会ったんですが、その時にもこの作品の感想をおっしゃっていただいて。本当にこの作品をよく理解してくださっているんだなということがわかって驚きました。

「小島さんは長編映画を撮るべき」ダイアンも小島監督の新作に衝撃を受けた一人

-小島監督が描くヒロイン像も、アキン監督が描くヒロイン像も、どちらも強い女性を描いているというところで共通点があると思うのですが、お二人が思い描くヒロイン像とは?

アキン監督:きっと小島さんもそうだと思うんですが、おそらく観客に、自分の作っているものを物理的に触れてもらいたいという気持ちがあるのではないかな。視覚的な言語というものです。映画の場合、観客が、自分の肉体に何かが触れたような感情を抱くといった経験がありますよね。ホラー映画なんかはそうだし、音楽ドキュメンタリーなんかでも、ビジュアルと音楽が合わさって、何かが体に触れているような感覚をいだいて鳥肌が立つ時がある。エロチックなシーンなんかでも同じような効果があると思います。僕が言っていること、小島さんだったらわかってもらえますよね。

小島監督:もちろんです。

アキン監督:映画監督として、ゲームクリエイターとして。僕らはいかにして観客にそういった感覚を抱かせられるか、ということを考えながら作品を作っているんだと思うんです。体験したことがないような場所に観客を連れていって、触れてもらいたい。だからこそ、ダイアンには感謝をしているんです。素材……という言い方は正しくないかもしれませんが、撮影される対象物として彼女は本当に素晴らしい。

ダイアン:ありがとう。

アキン監督:ビジュアル的な要素もそうですが、演技をするときも全身を使ってくれる。それは例えるならば、ボクサーがパンチを繰り出す時に、ただ腕を振り回すだけなのではなく、腰や膝を使うのと同じこと。目の演技ひとつとっても、彼女の全身がその演技を支えているし、逆もしかりなんです。映画のビジュアルに、彼女の肉体をきちっと刻みつけることができる。それは見ていて本当に面白い体験だったし、そういう役者さんに出会えて本当に感謝しています。

ダイアン:私にとってもこの作品はとても大切な映画になったんですよ。

小島監督:全くその通りですね。ゲームというのは、コントローラーがあれば彼らを動かせるんですけれども、結局は今のテクノロジーではビジュアルとサウンドしかないんですよ。そこに五感、六感をいかにして補うか。コンピューターというのは、実は100%の制御ができなくて。処理がオーバーすると、画面がフリーズしてしまい、全部が動かせなくなるんです。例えばハエをブーンと飛ばしたいのに(処理的な問題で)飛ばせないような時でも、(画面の外に)ブーンという音を鳴らすだけで、そこにハエがいるなと感じられる。僕も映画の手法を使ってゲームを作っているので、そういったところは共通項だと思いますね

この三人が組む未来もありえそう!

アキン監督:僕もゲームから学ぶことが多いんですよ。息子とゲームをしていると、どのようにしてゲームの中のキャラクターをコントロールしているのか。カメラをどうやってコントロールしているのか、ということを、いかにして映画に応用できるかということは考えますからね。ただ、僕はいまだに1970年代の映画づくりをしているような超オールドスクール(古風)なところがあるなと思っていたんで、小島さんにそう言っていただけると、もっと新しいやり方があるんじゃないかと考え始めてしまいますね。

-作家が信念を持って作った作品であるならば、ゲームも映画も垣根は越えていくと思うんです。そういう意味で、ダイアンさんが小島監督の映画に出たら、絶対にこの映画と同じぐらいすごいことになると思うんですが。

ダイアン:(拍手をしながら)いいですね。ぜひともキャンペーンをやりましょう!

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『女は二度決断する』予告編

映画『女は二度決断する』は4月14日より全国公開
オフィシャルサイト
(C) 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH

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