シネマトゥデイ

小江戸の宝物のような場所・川越スカラ座

ラジカル鈴木の味わい映画館探訪記

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 故郷の春日部と離れてるけど出身地埼玉県の、川越。JR埼京線快速で渋谷から1本。城下町として栄え、戦火、開発を逃れた蔵造りの建物が並ぶ。東映版『無法松の一生』(1963)、『鬼畜』(1978)のロケ地。街のシンボル・時の鐘の近くに映画館があったとは! 館名も古き良き劇場の響きで嬉しくなる、川越スカラ座さん。大正浪漫夢通り、一番街、鐘つき通り、ぶらぶらと20分。あちこちで立看板を見かけ街をあげ応援しているのがわかる。老舗・舛屋酒店で川越産クラフト生ビール「コエドブルワリー・瑠璃-Ruri-」を飲み、気分は盛り上がる。住宅地の狭い路地にひっそりとあり、驚いた!

今月の名画座「川越スカラ座」

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 よく間違えられるらしいが、いわゆる名画座ではない。過去作品の特集もするが現在はミニシアター系が中心。二番館三番館も少ない昨今、名画座の定義もちょっと曖昧だが、味わいはハンパない。1905年、明治38年に寄席「一力亭」で始まり1940年、演芸場から映画館へ、5度の変遷経て今に。鉄道が通る前、界隈には沢山の芝居小屋、映画館があった。現在の建物は昭和61年築。

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昔ながらの売店には映画関連の書籍、劇場オリジナルグッズも

 懐かしい切符売りの窓口。菓子や書籍の売店、赤絨毯のロビー、春日部文化劇場もこんなんだった。映画のVHSビデオとポスターの無人販売コーナー。革張りの扉を開け上映室へ入ると、驚くほど広い! 昔ながらの素朴な座席は数が少ないのでスペースにゆとりがある。2列目には珍しい手作りのテーブル、弁当を食べやすそう。

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無人販売所に並ぶVHSのビデオ。ホラーやアクションものが多い

 昭和15年に邦画専門「川越松竹館」に、昭和38年から洋画中心の「川越スカラ座」に。2007年、経営者引退で一旦閉館、だが街の最後の1館だったため、灯を消してはならないと地元の特定非営利活動法人プレイグラウンドが運営に乗り出し、各所修繕、デジタル対応の機器設置のため賛助会員を募り、ネットでもクラウドファンディングを実施し、必要な再オープン費用を得た。前二列の座席を撤去した空間で俳優や映画監督を招いた舞台挨拶やトーク、ライブが盛んに行われる。火曜は定休日、レイトショーは無し。

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前2列目の座席に設置した手作りのテーブル

地元出身の人気監督も来場!トークイベントは盛況

 「僕らが子供の頃、週末は“シアターホームラン”(2006年に閉館)かスカラ座のどっちかに通ったもんです。ジャッキー・チェンの映画とか観ましたねぇ。ここはちょっと大人向けのラインナップでした」。支配人の舟橋かずひろさんは46才、NPOの有志からスカラ座の支配人に。元埼玉県議会議員さんで、現埼玉県映画協会副理事長もされて。アメリカの大学で映画を学び、そこで数々の邦画の名作を観たという。フェバリットムービーはルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』(1963)と本当に名画がお好き。

 番組編成&イベント担当の飯島千鶴さんも川越市出身の同世代、常連客からNPOに参加し現在に。大映女優祭、デヴィッド・リンチ特集、ラーメンからローマ法王の映画まで、上映はバラエティーに富むが、邦洋、新旧問わず飯島さんが観て欲しいと感じた作品をチョイス。個人的にはホラー映画の大ファンで『ソウ』『死霊館』シリーズを手掛けたジェームズ・ワン監督の作品に夢中。年間300本を観る。

 「来場した監督は積極的にトークしてくださいます。是枝裕和監督は毎年必ず1、2回、お気に入りの劇場の1つらしくありがたいです。比較的まじめな方が多いですが、埼玉出身の吉田恵輔監督が『犬猿』(2017)で来場されたときは、下ネタがバンバン出て場内大爆笑でしたね~。下半身がツルツルだとか、そんなハナシばかり(笑)」。先日は映画評論家の町山智浩さんが『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)の解説で7年ぶりの来館、満員札止めだった。

斜め上をいくオモシロ割引の数々

 6月に、恒例になったレ・ミゼラブル』(2012)お客さん参加型の発声可能上映を今年も開催。また窓口で唄いながらチケットを買うと割り引きになるのが話題になり、2013年は170人を割引いた。「皆さんミュージカルがお好きだから、なかなかお上手で(笑)」。他にも、主人公が三角関係に悩む『南瓜とマヨネーズ』(2017)では自分の“黒歴史だけど今はいい思い出”を話すと割引く“黒歴史割”を実施。「ほとんど女性で16~17人来場されました。特に、女性のお話が面白かったです。残念なのは、テレビの取材も受けたのですが、そこでしゃべっていただける方がいませんでした(笑)」。

 その他、フリースタイルでラップをすると割引、墨つぼ(大工さんが使うモノ)の持参で割引、タイアップしてるパン屋さんのカンパーニュを持参すると割引、ネコと自分が写っている写真の持参で割引……とまあ枚挙に暇がない。

市村正親も賛助会員!トラブルも多くの支援に助けられる

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上映室内の壁にびっしりと並んだ賛助会員の名札

 「震災の時に電力の規制等で、再び閉めるのか続けるのか? という状況でしたが、賛助の方々の顔が浮かび、亡くなった前オーナーも続けて欲しいとおっしゃり、当時の現場スタッフの強い要望もありました。また、1人で不安でいるお年寄りが集まれる場所をキープするためにも続けよう、という結論になりました」。

 近所で産まれ育った俳優の市村正親さんを筆頭に、場内には膨大な数の賛助会員の名札が並ぶ。古い建物なので不都合が度々起こるが、その都度多くの支援を得ている。2012年にトイレの配管が故障した際には、見積りは工面できる額ではなく、ツイッターで募金呼びかけ→朝日新聞デジタルに掲載→朝日新聞本紙に掲載→テレビと拡散、また普段映画を観ないのにカンパしてくれる人、地元だけでなく県外や都内、全国からも支援が届いた。日本最古の新潟の映画館・高田世界館が募金箱を置いてくれたり、トークで訪れた『この世界の片隅に』(2016)の片渕須直監督からも送金を頂く。ひと月で目標額が集まり無事、修繕が完了した。

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常設の、各所を修繕していくための募金箱

 しかし今もなお雨漏りするところがあったり、外壁も老朽化してもろくなっており、近隣と密着しているので音漏れの問題がある。「なので夜は上映不可なんです。夜の試写は音声は搾ってます。まだまだ問題はありますね」。応援は常にウェルカムだ。

スクリーンと馴染む街並みも堪能

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『東京物語』 原節子 笠智衆 監督:小津安二郎 1953年

 「川越は年間700万人のお客様が訪れます。適度に田舎、適度に都会で、商工農のバランスが取れていて、人口は少しづつ増えてます。物価が高くなく、若い人が個性的な店を出しやすいメリットがあります」と舟橋さん。かたや最近、観光の中心地に外資系チェーン店が出現したのと対照的に、かの島崎藤村も泊まった老舗「佐久間旅館」が閉館。「大資本の介入が進むと物価や地価が上がって若い人が借りづらくなり、映画館同様に街も没個性化してしまう。昨今の均一化を象徴しているようで、危機を感じます」。

 映画はどこで観るかで大きく変わる。ここでの鑑賞は、建物、歴史、周囲の環境も含めて特別。街に出かけ映画を観て、また街にという流れで、他にない想い出になる。「小津安二郎特集のとき、18才で小津作品を観て以来、60年ぶりに来たっていうお客さんがいらして驚きました。川越なら、そのまま画面から移行したように錯覚するでしょう。『この世界~』も、そのまま映画の中と情景が繋がります。他ではない何かを感じて欲しいです」。

 帰途、ほど近くの、江戸・明治時代から続く“菓子屋横丁”で、買い食いしつつお土産を物色。まさに一場面のセットに居るようだった。素晴らしき哉、川越!

映画館情報

川越スカラ座
住所:埼玉県川越市元町1-1-1
TEL:049-223-0733 客席数:124 定休日:毎週火曜日
URL:http://k-scalaza.com/
Twitter:@k_scalaza

ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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