シネマトゥデイが選ぶ映画ベスト20(2025年版)

2025年1月1日からの1年間に劇場、そしてストリーミングサービスで日本初公開された全ての映画から、シネマトゥデイ編集部がベスト20作品を決定! ストーリー、キャスト、演技、映像、社会性、エンターテインメント性、観客動員数、話題性などあらゆるポイントを踏まえて議論し、今年を代表する20作品を選び出しました。
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第20位『爆弾』
呉勝浩のベストセラー小説を実写化。連続爆破事件の容疑者タゴサクを怪演した佐藤二朗が大いに話題を呼び、口コミで大ヒットにつながったサスペンス。刑事たちの問いかけをのらりくらりとかわし、観客を終始翻弄しまくる魅惑のヒール像がアツい支持を得た。物語の大半が取調室でのタゴサクVS山田裕貴、渡部篤郎ら演じる刑事たちの対峙であるにもかかわらず一切緊迫感が途切れず、警察の複数部署が交錯しながら埋没するキャストが誰一人いないのは、『帝一の國』『キャラクター』などで主役級のキャストを束ねてきた永井聡監督ならでは。ド迫力の爆破シーンなどスクリーンで観る醍醐味の詰まったエンタメ作品として選出された。
『爆弾』作品情報 2時間17分
爆弾【電子限定特典付き】(講談社文庫)Kindle版/呉勝浩 著 >>
第19位『8番出口』
無限にループする地下通路で異変を見つけ、脱出を目指すインディーゲームを実写映画化。明確な物語を持たない原作に重厚な人間ドラマを加えることで、ゲームを象徴する“歩く男”にも独自の解釈と存在感を与えた。同一空間で異変を探し続けるというシンプルな構造ながら、95分間観客を惹きつける演出の工夫と二宮和也の確かな演技力によって、単調さを感じさせない。一度では見抜けない考察要素も多く、Z世代を中心にリピーターを獲得。カンヌ国際映画祭でも高評価を受け、ゲーム実写化の新たな可能性を示した一作としてベスト20入りを果たした。
『8番出口』作品情報 1時間35分
8番出口(水鈴社) Kindle版/川村元気 著 >>
第18位『罪人たち』
『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督が、リメイクや続編で溢れるハリウッドに一石を投じた野心作。黒人たちが集うナイトクラブを開業した双子の兄弟が遭遇する悪夢の一夜を、音楽、アクション、ホラーが融合したジャンルミックスで描き出す。監督のキレ味鋭い演出は健在で、人種差別といった社会的テーマを巧みに織り込みながら、観客を予測不能な結末へと導く。クリストファー・ノーラン全面協力によるIMAXカメラを用いた撮影も圧巻で、没入感あふれる映像体験を実現。米アカデミー賞の有力候補にふさわしい傑作として、ベスト20に選出した。
『罪人たち』作品情報 2時間12分 PG12
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第17位『おんどりの鳴く前に』
ルーマニアの村で起きた殺人事件をめぐって、中年警官が小さな夢と正義の間で揺れ動くサスペンス。小さな村の日々を牧歌的に描くコメディーチックな前半から、殺人事件をきっかけに村の暗部が浮かび上がってくる転換が見事。警官としての正義を捨て、人生の折り返しにささやかな目標を叶えようとする主人公が、他人の生活をないがしろにする闇に向き合い変化していく姿に心打たれる。どこか間の抜けた雰囲気のまま迎える、熱いクライマックスは必見だ。腐敗に対して声をあげない、現代を生きる人々へのささやかな警鐘としても評価されランク入りとなった。
『おんどりの鳴く前に』を作品情報 1時間46分 PG12
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第16位『ふつうの子ども』
生き物が好きな小学4年生の男の子がクラスメイトの女の子の気を引きたいがために、彼女が熱心な環境活動に足を踏み入れ、思わぬ事態に発展していく……。「こんなはずじゃなかったのに」という子供の心もとない心理描写の積み重ねと、そこから浮かび上がってくる本当の顔。子供目線を貫いた高田亮の脚本の巧みさに加え、大半をオーディションで選出したという子役たちからドキュメンタリーと見まがうほどナチュラルな演技を引き出した呉美保監督の演出は特筆すべき。大事件を描いているわけではないにもかかわらず驚くほどスリリングな、日常に潜むサスペンスとして今年を代表する一本に選出された。
『ふつうの子ども』作品情報 1時間36分 G
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第15位『敵』
『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』などの吉田大八監督が、長塚京三を主演に迎え、筒井康隆の同名小説を映画化。日本家屋に暮らす77歳の元大学教授の静謐な日々が「敵がやって来る」という不穏なメッセージを受け取ったことから徐々に変化していく。全編モノクロ映像でつづられる、主人公の淡々とした日常描写の美しさ、夢と現実の境界が曖昧となる後半への美しい転換。小説のテーマをとらえながらも映画独自の読後感へと到達する巧みな脚色、そして何より孤独と不安を体現した長塚京三の演技に絶賛が集まりランクインした。
『敵』作品情報 1時間47分 G
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第14位『ひゃくえむ。』
100メートル走という一瞬の世界にすべてを懸ける者たちの執念と孤独を描いたアニメーション映画。疾走感のある研ぎ澄まされた映像と、緊張感あふれるリアルな演出で、ゼロコンマ数秒を競う世界を鋭く描く。才能と努力、勝者と敗者という、単純な二項対立にとどまらず、勝負が終わった後の喪失感や空虚さまでも静かに描き出す。アニメーションならではの表現で、“速さ“を可視化し肉体と精神が限界まで削られていく感覚を観客に共有させた点を評価し、ベスト20入りを果たした。
『ひゃくえむ。』作品情報 1時間46分
ひゃくえむ。新装版 上 (マガジンポケットコミックス) Kindle版/魚豊 著 >>
第13位『ズートピア2』
あらゆる動物が共に暮らす文明社会“ズートピア”を舞台にしたディズニー・アニメーション映画の約10年ぶりの続編。差別や偏見といった前作からの社会的なテーマを背景にしっかり息づかせつつ、警察のバディとなったウサギのジュディ&キツネのニックの関係をメインに描く。事件の謎を追う中で二人のパートナー関係が巧みに掘り下げられていく点が秀逸で、スピーディーな展開に、ディズニー作品の枠を超えた名作オマージュの数々など楽しさに満ちた完成度の高い続編。大ヒットを記録して映画興行を盛り上げた点も評価につながった。
『ズートピア2』作品情報 1時間50分
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第12位『ファーストキス 1ST KISS』
日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」「ザ・ロイヤルファミリー」、映画『ラストマイル』など快進撃が止まらず、今国内で最も注目されるクリエイターの一人である塚原あゆ子監督。映画『花束みたいな恋をした』などの人気脚本家・坂元裕二との初タッグも話題を呼んだ本作は、タイムトラベルというファンタジックな設定ながら、結婚の現実という誰もが共感できる等身大のラブストーリーが高く評価された。夫婦を演じた松たか子と松村北斗のカップリングも絶妙で、死んだ夫の運命を変えるべく生前の夫に繰り返し会いに行く妻は、ありふれた日常の尊さと取り戻せない時間の重みを実感させ、脚本家、監督、キャストのマッチングの成功例とも言うべき快作。
『ファーストキス 1ST KISS』作品情報 2時間3分 G
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第11位『スーパーマン』
ジェームズ・ガン監督が指揮を執る新生DCユニバースの劇場映画第1弾。思いがけない敗北を経験した若きスーパーマンが、痛みと葛藤を抱えながら、現代に求められる等身大のヒーローへと成長していく姿を、クラッシックな魅力を踏まえた原点回帰の人間ドラマと迫力あるアクションで描き出す。登場人物が多いため説明不足に感じる部分もあるが、それ以上にガン監督のキャラクターへの愛情が伝わり、彼らの今後をもっと見届けたくなる。DC新時代の幕開けを告げ、今年のアメコミ映画を象徴する一本としてベスト20入りを果たした。
『スーパーマン』作品情報 2時間9分 G
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第10位『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』
24年前に第1作が公開されて以来、多くの人々に愛されてきたラブコメ映画の金字塔『ブリジット・ジョーンズ』シリーズ第4弾にして完結編。レネー・ゼルウィガー演じる主人公ブリジットの応援したくなるチャーミングさ、コミカルなラブストーリー、はちゃめちゃな友人たちなどシリーズの魅力はそのままに、この24年という時の重みを軽んじず、死と喪失も真正面から描き切った。悲しくもとびきり温かい人生賛歌はブリジットと共に年を重ねてきた全ての人の胸を打つはずで、美しく成熟した完璧な完結編としてトップ10入りを果たした。
『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』作品情報 2時間4分
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第9位『チェンソーマン レゼ篇』
人気アニメ「チェンソーマン」初の劇場版。原作屈指の人気エピソード「レゼ篇」をもとに、デビルハンター・デンジと謎の少女レゼの出会いから、胸を打つ結末までを描く。前半は甘酸っぱいラブロマンスを繊細な映像美で表現し、後半はシリーズらしさ全開のスタイリッシュかつ過激なアクションが炸裂。随所にちりばめられた映画オマージュもニクく、アニメ映画として無駄のない完成度を誇る。米津玄師の楽曲に合わせてレゼが踊る“レゼダンス”もSNSでバズり、今年のエンタメシーンを象徴する一作として第9位に選出した。
『チェンソーマン レゼ篇』作品情報 1時間40分
チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL 集英社) 藤本タツキ 著 >>
第8位『フロントライン』
新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の最前線で戦った人々の実話を基に描く人間ドラマ。船内外における医療従事者や行政関係、隔離生活を余儀なくされた乗客と船員たちの知られざる奮闘に、SNS上の騒動やマスコミ報道への問題提起も含め、忘れてはいけない出来事を多角的に記録した重要な一本としてランクイン。実在の人物をモデルにした役に挑んだ、小栗旬、松坂桃李、池松壮亮、森七菜、窪塚洋介をはじめとするキャスト陣による抑制の効いたリアリティあふれる演技とアンサンブルも支持された。
『フロントライン』作品情報 2時間9分 G
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第7位『聖なるイチジクの種』
何度投獄されようと母国イランの問題点を描き続けてきたモハマド・ラスロフ監督作で、骨太の社会派にして、映画的なダイナミズムにも満ちたスリラー。昇進するも、求められているのは「反体制派の死刑判決にただ判を押すこと」だと知り愕然とするイマンと、その“良き妻”ナジメ、彼らの現代的な2人の娘たちの姿を描く。イランが抱える家父長制と女性蔑視のシステムを緊迫感あふれる家族のドラマに見事に落とし込んでおり、立ち上がる女性たちの描写を含め、イラン政府がラスロフ監督を恐れるのも納得のパワフルさが高く評価された。
『聖なるイチジクの種』作品情報 2時間47分 G
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第6位『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』
「ウォレスとグルミット」の生みの親であるニック・パーク監督が手掛けた、シリーズ16年ぶりとなる新作。発明家のウォレスと犬のグルミットが、世紀の悪役フェザー・マッグロウと再び対決する。ペンギンでありながら、赤いゴム手袋を頭に被ってニワトリに変装するフェザー・マッグロウの、単純な造形から醸し出される悪のカリスマ性が絶品で、本作は彼を映画史に残る悪役の地位へと高めた。CG全盛の中、ストップモーションのクレイアニメの質感は温かく、ウォレスとグルミットの絆の強さが涙腺を刺激する感動作として高評価を得た。
『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』作品情報 1時間21分 G
2005年『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』はこちらで
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第5位『ウィキッド ふたりの魔女』
名作ミュージカルを映画化し、「オズの魔法使い」の“西の悪い魔女”と“南の善い魔女”の知られざる友情と運命を描くファンタジー大作。対照的な2人が心を通わせ、引き裂かれていく過程を、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの圧倒的な歌唱力で感情のうねりをダイレクトに観客に届けた。高揚感のあるエンターテインメント性と、差別や偏見に抗う人々へのメッセージ性が、一つの世界観の中で見事に調和。舞台版の魅力を損なうことなく映像ならではのスケールを実現し、スペクタクルとドラマの両面での完成度の高さが評価され、5位にランクインした。
『ウィキッド ふたりの魔女』作品情報 2時間45分 G
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第4位『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
1980年代の香港・九龍城砦をメイン舞台に、黒社会の覇権争いと若者たちの青春が交差するクライムアクション。『るろうに剣心』シリーズのアクション監督・谷垣健治による『ALWAYS 三丁目の夕日』×『HiGH&LOW』がコンセプトのアツすぎるアクションと、ノスタルジーを刺激する九龍城砦の再現が見事に融合。スターから若手まで入り乱れる、敵役まで愛おしい魅力的なキャラクター人気も相まって文字通りの熱狂を日本でも巻き起こし、今年を代表する一本としてランクインした。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』作品情報 2時間5分 PG12
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第3位『ワン・バトル・アフター・アナザー』
終わりなき闘争の連鎖に巻き込まれる人々の連帯と選択を描いた、切迫感あふれるアクション・ドラマ。本作を3位に選出したのは、強度の高い映画体験が多くの人に支持されたからだ。切れ目の少ないアクション演出や、登場人物と近い距離で捉えるカメラが緊張感を持続させ、息つく暇を与えない。連鎖する闘争を描く物語は、暴力と連帯の倫理を鋭く問う作家性が際立つ。スピード感ある演出と身体性を前面に出した映像は没入感が高く、SNSでの考察的な広がりも興行を後押しした。分断の時代を映すテーマ性と、ジャンル映画としての完成度を高く評価した。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』作品情報 2時間41分 PG12
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第2位『教皇選挙』
バチカンを舞台に次期教皇を決める密室の選挙戦を通じて、信仰と権力、人間の欲望が交錯するミステリー。本作を2位に選出した理由は、完成度と革新性の両立にある。密室で行われる教皇選挙を舞台に、信仰と権力の緊張関係をミステリーとして描写。閉ざされた空間を強調する構図と、足音や衣擦れ、沈黙までも際立たせる音響設計が、心理的圧迫感を増幅させる。派手な演出に頼らず、映像と音で観客を内部に閉じ込める体験は斬新で、宗教映画の枠を超えた現代的傑作として高く評価された。
『教皇選挙』作品情報 2時間 G
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第1位『国宝』
『悪人』『怒り』などの吉田修一原作・李相日監督のゴールデンコンビによる本作は、主演の吉沢亮をはじめ横浜流星らキャストの吹替えナシの歌舞伎シーンを筆頭に話題は尽きず、22年ぶりの記録更新となる邦画実写ナンバーワンの興行収入、2025年の新語・流行語大賞のトップテン入りなど社会現象的ヒットを記録した。映画界にとどまらない功績を残した意味でも満場一致のベスト1選出となった。演者から極限の演技を引き出す李監督の演出力、世襲制を巡る壮絶な愛憎劇、フランス映画界で活躍するソフィアン・エル・ファニを招いての圧巻の映像美。サブスク全盛期にあって、多くの観客が3時間超えの長尺を感じることのなく劇場ならではの圧倒的没入感を体感したことが最大の功績といえる。
『国宝』作品情報 2時間55分
ベストセラーでもある原作はこちら!
「国宝 (上) 青春篇 (朝日文庫) 」吉田 修一 著 >>


