軍人の妻でも特別視しない、人間ドラマの旨み

軍人の妻の特異性にドラマを見出す――愛する者の死の不安は、これまで多くの映画で描かれてきたが、ベタなメロドラマに走らないのがいい。
それを可能にしたのは、家族と生きる普通の人妻の部分に重きを置いた作り手の視点。子どもの世話に追われるだけでなく、ママ友同士の関係には性格の不一致もあれば、気楽にエロ話をかわせる間柄もある。そんな一般性と、特異性の微妙なバランスが取れているから、本作は素直に夢中になれるのだろう。
彼女たちのストレスのはけ口は言うまでもなく歌だが、そのカタルシスが名曲とともに観る者の心にもしっかり浸透する。庶民派カッタネオ監督のイイ仕事。