じりじりと、いつ終わるとも知れぬ緊迫感に溢れた重戦車のリアリズム。「これが戦争だ、これが戦場なんだ!」と台詞で幾度も強調されはするが、まさにそうした常軌を逸した時間感覚&倫理観がハリウッド映画らしからぬ戦慄をもたらす稀有な作品。しかし、フラー/イーストウッド風の「生き残ってナンボ」な新兵成長物語と、アルドリッチ/ペキンパー風のクールに徹しつつもきちんと役割分担されたキャラクター、いきなりブッこまれる女性住民とのまるでカサヴェテス映画のようにネチネチした会話劇…等々、異端にして正統なアメリカ映画たちがちらちら垣間見えるのが楽しい。D.エアーらしい「極限下の疑似家族」的物語でもあるしね。
略歴: 映画評論家。1963年京都生まれ。デザイン集団「groovisions」の、唯一デザインしないメンバー。現在、京都・東洞院蛸薬師下ルの「三三屋」でほぼ月イチ・トークライヴ「ミルクマン斉藤のすごい映画めんどくさい映画」を開催中。雑誌「テレビブロス」「ミーツ・リージョナル」「キネマ旬報」等で映画コラムを連載中。