狂気が恐怖を呼ぶ現代の『タクシー・ドライバー』

何より強烈なのは主人公の“目”。「映画史に残るイヤなヤツ」という売り文句にも納得がいくが、何かを信じ切っているこの主人公の“目”には同時にキャラの説得力も宿る。
彼が信じるのは道徳ではなく、“成功”の哲学。地位や富を得ることを正しいと認識し、モラルはその信心に踏みにじられる。アメリカンドリームの暗部と、こんな人間が現実にいそうなリアリティ。それが伝わる点で、立派な恐怖映画だ。
夜の街を車で流す主人公にはLAとNYの違いこそあれ、公開時に“狂気”“病み”と評された『タクシー・ドライバー』の主人公にも似た狂気が重なる。主演のジェイク・ギレンホールの“目”には、確実にそれが浮かび上がる。