松岡茉優の存在が、映画に楕円の曲線を描いてゆく快感

2021年3月28日 轟 夕起夫 騙し絵の牙 ★★★★★ ★★★★★

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
騙し絵の牙

まず、攻めた脚色に拍手を。激しく摩擦しあうことで互いに止揚され、なおも言葉で撃ちあう各キャラクターの造形が際立っている。そして演出にも。ドライな肌触りと、しかしジワリと体温を滲ませる二段構え。単なる“騙し合いバトル”ではなく、「椅子取りゲーム」の中に(時代を)サバイヴする者たちの矜持と業とが浮かびあがってくるのだ。

大泉洋演ずるピカレスクな編集長が定点Aとなり、定点Bを担った新人編集者役、松岡茉優の存在が映画に楕円の曲線を描いてゆく快感もたまらない。特に屋上での“風景”に関するヴィヴィッドな対話に唸った。終盤の怒涛の繋ぎ、時間軸が複雑に交錯していく編集の妙もまた「吉田大八ワークス」の真髄だ。

轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴:文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「映画秘宝」「クイック・ジャパン」「DVD&ブルーレイでーた」「QJweb」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況:またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫さんの最近の映画短評

もっと見る

[PR]