『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』時代の変化とフェミニズムを巧みに盛り込んだ傑作

第92回アカデミー賞

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』より

 作品賞をはじめ6部門にノミネートされた本作は、『レディ・バード』(2017)で監督賞にノミネートされたグレタ・ガーウィグの創造性が再び証明された作品だ。原作は、ルイザ・メイ・オルコットの「若草物語」シリーズだ。南北戦争中、従軍牧師として出征した父親不在のマーチ家を守る賢母と四姉妹の暮らしをつづった第1作「若草物語」は、世界中の少女たちに読み継がれてきた。(文・山縣みどり)

 これまでにもジョージ・キューカー監督やマーヴィン・ルロイ監督、そしてジリアン・アームストロング監督らが映画化してきた作品をガーウィグは大胆に脚色。オルコットが自身を投影した次女ジョー(シアーシャ・ローナン)を軸に、大人の世界に踏み込んだ若き女性の、遭遇する出来事や決断を通しての精神的な成長を描き出す。

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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』より

 四姉妹の少女時代と成長後という二つの時間軸をジャグリングする構成で、ジョーと姉妹たちが少女時代の経験からさまざまな人生訓を得ていることを強調する。ジョーが姉妹のことを口にしたり思い浮かべたりするたびに、姉妹たちのエピソードに切り替わるスムーズな編集によって、四姉妹の強い絆が浮き上がる仕掛けだ。

 スケート中に凍った池に転落した四女エイミー(フローレンス・ピュー)をジョーと幼なじみのローリー(ティモシー・シャラメ)が救出した逸話やライム事件、三女ベス(エリザ・スカンレン)とローレンス氏(クリス・クーパー)の心温まる関係など原作を愛する人なら誰もが頭に思い浮かべるエピソードももれなく盛り込まれている。

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』より

 しかし原作に忠実でありつつもさらに深く読み込んだガーウィグの解釈こそが、本作を過去作と一線を画すものにしている。作家志望のジョーが直面する社会の壁によって当時の女性を取り巻く社会環境を浮かび上がらせ、オルコットが伝えたかったメッセージを観客に投げかけているのだ。

 それは何か? 女性の立ち位置と経済の関係であり、クリエイターの道を選択した女性の野心の行方だ。19世紀半ばのアメリカでは女性が就ける職業は限られていたし、経済的自立も困難だった。マーチおば(メリル・ストリープ)が四姉妹に玉の輿結婚が生きる術と伝えるのも当然だろう。

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』より

 「ヒロインは結婚するか、死ぬしかない」という男性編集者の考え方に失望しつつ清濁併せ呑もうと頑張ったジョーが、ローリーとの結婚に逃げようとする展開は現代女性であっても共感しまくるはず。良妻賢母になりたいと望む長女メグ(エマ・ワトソン)や“自分自身のベストを引き出す”ことに情熱を注いで憧れていた人との恋を成就させるエイミーも、それぞれに夢を手にするために戦う女性として描かれていて、それはまさに現代のフェミニズムを反映している。

 普遍的な文学に時代の変化とフェミニズムを巧みに盛り込んだガーウィグのたぐいまれな才能にただもうひれ伏すのみ。

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』より

 これら素晴らしいケミストリーを生み出した役者陣のアンサンブルに美しい絵画のような映像を作り出したカメラワーク、繊細な衣装に心揺さぶられる音楽とすべてがパーフェクト! スタッフ&キャストのパワーをひとつにまとめあげたガーウィグの監督としての実力は評価されるべきだった。残念なことに、本作での監督賞ノミネートはなし!? 女性であることが理由なのであればそれは遺憾。ガラスの天井って、キャスリン・ビグローがヒビを入れたくらいじゃ割れないんですね。

エマ・ワトソンの花嫁姿!『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』日本版予告編

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