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LETO -レト- (2018):映画短評

LETO -レト- (2018)

2020年7月24日公開 129分

LETO -レト-
(C) HYPE FILM, 2018

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

なかざわひでゆき

過ぎ去りし平和な時代とロックに熱く燃えた青春

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 28歳の若さで交通事故死したソビエトの国民的ロック・スター、ヴィクトル・ツォイ。彼は高麗人、すなわち朝鮮系ロシア人だった。本作はヴィクトルがまだ無名のアマチュアだった’81年の夏(レト…正しい発音はリェータ)を舞台に、当局による様々な規制をものともせず、ロックに人生の全てを賭ける若者たちの熱い青春が描かれる。ソビエト社会が恐らく最も平和でのどかだった時代への郷愁を織り交ぜつつ、ポップな演出を施したモノクロの映像で鮮やかに再現される普遍的な青春群像。当時のロシアに育った筆者も胸に熱く迫るものがあったが、しかし同時に音楽は国境や文化や政治体制をも軽く飛び越えるパワーを持つことも再認識させられる。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

自由を求める若者を解き放つロック・パワーに心躍る

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

80年代のソ連・レニグラードを舞台にした青春ドラマと思っていた、最後で実話ものと知ってびっくり! 西側のロックといえば反抗や自由の象徴であり、ロッカーを目指す若者の気持ちは「国家に規制されたくない」の一択なのに、管理側の女性が「人々のお手本にならなければならない」と説明する不条理に笑った。不自由な状況で精一杯、自分らしく生きようとしたソ連ロッカーのひと夏の切ないこと。ボウイやTレックスのサウンドに心躍り、昔のミュージック・ビデオ風映像や語り部的な青年の挿入にニヤリ。自宅軟禁状態に置かれながら撮影したというK・セレブレンニコフ監督の才能とガッツに降参だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ツォイがロックに触れた夏

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

美しいモノクロ映像に、いきなり色が付いたかと思えば、MTV風ミュージカルが始まり、「第四の壁」を壊すなど、自由度が高く、政治的メッセージも強い“冷戦下、レニングラードの『突然炎のごとく』”。同様のアプローチをしている『カセットテープ・ダイアリーズ』と比べ、かなり単調ゆえ、ハッタリ感も否めないが、そこも含め、ロケンロールな印象だ。『ブラッドショット』に続き、絶妙なタイミングで流れるトーキング・ヘッズ「サイコ・キラー」などの使い方、伝説のミュージシャン・ツォイを長髪で演じるユ・テオ(『殺されたミンジュ』のニート野郎!)が醸し出す菅田将暉感なども悪くはないが、作り手が酔い過ぎてる感は強い。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

クリエイティビティたっぷり。甘酸っぱくてロマンチック

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

80年代のソ連が舞台のモノクロ映画と聞いておそらくもつ先入観を、思いきりぶっ壊してくれる。クラシックな映画の雰囲気から急にユーモアのあるミュージカルナンバーになったりなど、クリエイティビティ、遊び心、エネルギーがたっぷりなのだ。色彩やアニメを効果的に使うビジュアルも魅力。政治的な部分は積極的に強調されないものの、あの時代のロシアで西にあこがれた若者の、反抗的でハングリーな精神こそ、この映画のハート。ロシアのロックというあまり触れる機会のない音楽を、歌詞にしっかり注意を払って聴けるのもいい。ロマンチックで甘酸っぱい余韻を残してくれる映画。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

夏が来て、音楽が来て、溢れてきらめく

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 タイトルの"レト"は、ロシア語の"夏"。それまでロックというものが無かった場所に、60年代から80年代のロックが同時に一気に押し寄せ、寒い土地にやっと夏がやってきて、光がきらめきを放つ。それがもたらす途方もない開放感、そのうねりに身を任せた時の目が眩むような陶酔感を、この映画は体験させてくれる。物語は80年代ソ連のロック黎明期の実話が元ネタだが、それを知らなくても問題ない。ロックに初めて出会った時の歓喜には、どの時代でもどの場所でも変わらないものがあるからだ。
 モノクロ映像が光と影の双方を際立たせ、時々の鮮やかな色彩と手書きアニメが躍動感を増幅させ、音楽が心を揺さぶり続ける。

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森 直人

レニングラード・アンダーグラウンド・カウボーイズのあの夏

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

監督いわく「ペレストロイカ前の、現在のロシアになってしまう前の最後の夏の物語」。まさにイノセントな輝き、追憶の祝祭感に溢れた音楽青春映画で、ロックの引用は“純情”の言葉が似合う。本作W主人公の1人のモデル、ヴィクトル・ツォイ主演の『僕の無事を祈ってくれ』(88年)、同じヌグマノフ監督『ワイルド・イースト』(93年)、ボドロフの『モスクワ・天使のいない夜』(92年)等も想起。

ジム・モリソン風のR・ビールィクは歌い方がリアム・ギャラガーっぽいとか思ってしまうが、列車でトーキング・ヘッズ、バスでイギー・ポップをミュージカル化する演出や、“踊ってはいけない国”の客席を踊らせる脚色の甘美に涙が出る。

この短評にはネタバレを含んでいます
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