ベネデッタ (2022) 映画短評

ライター2人の平均評価: 4.5
衰え知らずのアナーキー・イン・ザ・ワールド
面白すぎ。「私はキリストの花嫁」と言い張るベネデッタは、ポール・ヴァーホーヴェン監督(84歳)自身が規定する様に「手段はどうあれ男性社会で本物の権力を手にした女性」、『氷の微笑』『ショーガール』『ブラックブック』『エル』の主人公の系譜を受け継ぐパワータイプの世界変革者だ。
ジャンヌ・ダルクも彷彿とさせるベネデッタは一種のトリックスターと言えるが、結果的にカトリック教会の男性優位や欺瞞を糾弾していく。監督の本質は制度的な抑圧をぶっ壊すアナーキスト。『4番目の男』や『グレート・ウォリアーズ』等との関連も興味深く、バルトロメア役のダフネ・パタキアも『ファイブ・デビルズ』と全然違う印象に驚いた!
ヴァーホーベン健在
ヴァーホーベン7年ぶりの新作は、やはりというべきかまたもや”攻めと挑発”の一作。御年84歳となるこの鬼才ですが、老け込む感じは全然ないですね。実際に起きた出来事をヴァーホーベンならではの視点で描き出します。R18指定も納得のバイオレンスとセックス、教会への挑発などなど遠慮など一切ない過激な一品です。主演のヴィルジニー・エフィラの体当たり演技も見事ですが、大ベテランのシャーロット・ランプリングがまた見事な存在感を発揮しています。キリスト教と教会の在り方にかなり切り込んでいますが、キリスト教の予備知識が実はあまり必要のない構造になっているのがまた見事です。