爆弾 (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.7
社会派エンターテインメントとして極めて優秀!
暴行事件の取り調べ中に次々と爆破テロを予言し、ことごとく的中させていく酔っぱらいの中年男。果たして彼は爆破テロの首謀者なのか、他に共犯者がいるのだろうか。中年男の仕掛ける人を食ったような謎解きゲームに翻弄されつつ、真相を究明して次なる爆破テロを未然に防ごうと奔走する警察だが…?一刻一秒を争うタイムリミット・アクションと緊迫する頭脳戦のスリルで観客を釘付けにしつつ、その背景として悪意や憎悪や差別が蔓延する現代日本社会の醜い実相を不気味に浮かび上がらせていく。社会派エンターテインメントとして極めて優秀。中でも佐藤二朗の怪演は見事である。彼の存在なしで本作は成立しえなかったはずだ。
佐藤二朗の"カオ芝居"で魅せる
すべてを佐藤二朗の"カオ芝居"で語らせる。そう思ってしまうくらい、佐藤が演じる容疑者の顔のアップが多い。舞台のほとんどは警察署の取調室。主要人物は容疑者と、彼を尋問する刑事たち。そうした視覚的にバリエーションをつけにくい物語を、あえて人物の顔の表情で描き、容疑者の心理に焦点をあてる。後は原作小説の謎解きストーリーの面白さに委ねる。この大胆な演出が痛快。
浮かび上がるのは、人間感情の機微、謎解きの巧みさだけではない。並行して、容疑者やベテラン刑事の世代と、若い刑事たちの世代を対比させ、2つの集団の価値観がまったく異なることも描き出す。それが、謎解きミステリーにとどまらない余韻を残す。
ギリギリの心理戦、見応え抜群
やはり、笑いを求められていない佐藤二朗は恐ろしい。正体不明、ありとあらゆる者を翻弄し続けるスズキタゴサクは今となっては彼しか有りえなかったと思う。一方、これに対する山田裕貴。一応刑事ではあるもののマイペースさを崩さないこちらもかなりの変人である。この二人が密室で繰り広げる会話劇がメインなために、画が静かになりかねなかったがここは取調室の外の出来事も巧く取り込んで起伏に富んだ見応えのある映画になった。ミステリーファン、サスペンスファンには見逃せない一本と言えるだろう。続編小説がまた面白いので映画もシリーズ化されると嬉しい。






















