マリリン・モンロー 私の愛しかた (2022):映画短評
マリリン・モンロー 私の愛しかた (2022)
ライター2人の平均評価: 3
男社会の理不尽に抗い翻弄された素顔のモンロー
ハリウッド史上屈指のトップスター、マリリン・モンロー。その生涯を紐解くドキュメンタリーは枚挙にいとまがないが、本作は私生活の彼女を知る人々の証言を中心に構成することで素顔のモンローに迫る。そこから浮かび上がるのは、孤独な幼少期や性暴力被害のトラウマを抱え、それゆえ低い自己肯定感に苦しみ、映画業界に蔓延る性差別や性搾取に悩まされながらも、「映画スターになりたい」という強烈な欲求に突き動かされてキャリアを切り拓いた聡明でタフな女性像。男社会の理不尽に抗い続ける姿に共感しかないが、だからこそ早すぎる最期が哀れを誘う。ただし、本作で言及される死の真相は、あくまでも仮説のひとつに過ぎないので要注意。
夢見る少女はなぜ「もう一人の自分」を作ったのか
映画の世界を夢見る少女だったノーマ・ジーンが、もう一人の自分「マリリン・モンロー」をいかにして作り上げ、売り出し、そして破綻していく過程を、膨大な資料映像と関係者の証言によって描き出す。彼女がもう一人の自分を必要としていたのは、家族との複雑な関係もさることながら、幼い頃に性的な虐待を受けていたことが大きい(作中では実名を挙げて加害者を告発している)。少女が自分の翼で羽ばたこうとしても、男たちに妨害され、コントロールを失っていく姿が哀しい。終盤では謎の多い彼女の死因について結論を導き出しているが、これまでにいくつも浮上してきた説の一つだと留意しておきたい。