テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ (2024):映画短評
テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ (2024)
ライター3人の平均評価: 3.7
かなりパンクな、痛快おばあちゃん映画
93歳の老婆が電動カートに跨り、「オレオレ詐欺」に立ち向かう、痛快おばあちゃん映画。しかも、組織の黒幕が悪童アレックスがまんま爺さんになったマルコム・マクダウェルであり、ニートなボンクラ息子に頭を悩ます娘が『パーティーガール』再燃中のポーカー・ポージー! このキャスティングだけで、どんだけパンクな映画なのかお分かりだろう。トム・クルーズというか『ミッション:インポッシブル』へのパロディあり、友人がみんな亡くなってるブラックな笑いあり、本作が遺作となったリチャード・ラウンドトゥリーの好演も光る。社会派なライトコメディにして、拾いモノが感ハンパなく、★おまけ。
監督のパーソナルなところから来た温かさがある
大ベテラン女優ジューン・スキップが90代にして初めて主演を務めたというだけでも、大拍手!彼女はさすがの余裕と存在感を見せつけるだけでなく、このアクション映画でほとんどのスタントを自分でこなしたというのだから感心。今作で監督デビューを果たすジョシュ・マーゴリンは、100歳越えの祖母(名前はテルマ)が騙されそうになったことをベースに脚本を書いたとか。先が見えるストーリーではありながら、愛すべき映画になったのは、パーソナルなところから来ているからだろう。テルマの孫を演じるのは「グラディエーターII」で悪役を務めたフレッド・ヒッキンジャー。彼もとても良く、ふたりの心のつながりが映画を温かくする。
撮影時93歳の軽妙&愛おしい演技、まさかのアクションに敬服
おばあちゃんが主人公の映画…と聞くと、偏ったイメージを持たれやすいが、固定観念を軽々と超えていく快作。何かと話題の「オレオレ詐欺」に対し、毅然と立ち向かうテルマの活躍は、もちろん危なっかしい面もありつつ、「そこまでやっちゃう!?」な無茶ぶりで、演じたJ・スキッブが文字どおり体を張って、目を疑うアクションもこなしてるので説得力がハイレベル。そしてこれ、監督の祖母の実話というのにも驚く。
高齢者“あるある”も誠実にエピソードに入れ込んでいるので素直に笑えるし、何より孫との関係が愛おしく描かれるので、観ていて心地よい。トム・クルーズへのオマージュなど映画的サービスも盛られ、99分ノンストップな快感。