バイオレント・ネイチャー (2024):映画短評
ライター2人の平均評価: 3.5
アートとエクスプロイテーションを融合した新感覚スラッシャー
広大な森に囲まれた湖のキャンプ場、墓地から蘇った不死身の連続殺人鬼ジョニーが、キャンプを楽しむ今どきの若者たちを虐殺する。『13日の金曜日』を意識したであろうことは一目瞭然。数多のスラッシャー映画と決定的に違うのは、全編を通してほぼ「殺人鬼の視点」が貫かれていることであろう。本能の赴くまま森を彷徨い、次々と若者を殺していくジョニーの姿を淡々と追うカメラ。北米の美しくも雄大な自然を捉えた映像はテレンス・マリック作品を彷彿とさせ、その果てしない静寂が殺人鬼の孤独や哀しみをも浮き彫りにする。一方でゴア描写にも一切の手加減なし。まさにアートとエクスプロイテーションの融合。なかなか斬新な試みだ。
静寂の中、身体破壊の音が響く
身体の破壊に特化した、静かなスラッシャー・ムービー。殺戮は突然なので、被害者が悲鳴を発することもなく、静寂の中に、瞬時にして肉が裂かれ、骨が砕け、血液が噴出する音が響くという、音響スラッシャー・ムービーでもある。
その行為を際立たせるため、殺戮者に目的意識や情念はなく、殺人という意識もなく、ただ幼い子供がなんとなく昆虫の手足をちぎってみるように、人間の身体を破壊していく。ストーリーとして殺戮者の行動の理由は描かれるのだが、殺戮行為にその意識は感じられない。『ABC・オブ・デス2』収録の『ZYGOTE 受精卵』のクリス・ナッシュ監督・脚本が、一種独特な惨殺を描き出す。





















