Ryuichi Sakamoto: Diaries (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
余命宣告と向き合ったアーティストの記録
音楽ファンならずとも引き込まれるのは、故・坂本龍一の偉業ではなく、最後の3年半をたどっているから。余命宣告を受けたら、自分はどう人生と向き合うだろう? そんなことを考えさせられる。
“Diaries”というタイトル通り、本作のベースは彼の”日記”。短い記述ながらも、死と向き合う人間の本音や、それでも尽きない創作や音楽活動への意欲が漏れ聞こえてくる。
インタビューなどのフッテージ映像は多いが、やはり鍵盤に向かっているときの姿や表情、指使いをとらえた細やかな映像がいい。とりわけ「シェルタリング・スカイ」のピアノ演奏シーンは圧巻。アートへの、ひいては生への情熱が伝わってくる。
人生の最後が自分事のようにカウントダウンされ、思わぬ戦慄も
どんな結末かはわかっている。だから余計に怖く切ない。まるで観ているこちらの人生の残りがカウントダウンされている錯覚もおぼえる。一方で、闘病環境は経済的に恵まれた人のそれであり、多くの人は、同じ病に倒れたら、もっと辛い状況が待っているかも…など考えさせられ、その意味でも秀逸なドキュメンタリー。
冷静に向き合えば、世界最高峰アーティストのプライベート映像、さらに終活へのアプローチに触れられるプレシャスな体験になるはず。特に坂本龍一の音楽に対する野心、欲望、愛情は、命の炎と反比例するように迫ってくる。近しい人たちの証言は貴重だし、すでにNHKで放映され、反響も呼んだ“最期”も映画らしい美しさを放つ。






















