郷:映画短評
「競争」から離脱し、自然と宇宙を内的に旅する
レイチェル・カーソンの引用から始まり、海/波のショットを経て本編に入る。まず序盤、高校野球部の練習風景を捉えた流麗なカメラワークを目にして、これはテレンス・マリックじゃないか!と驚いてしまった。『トゥ・ザ・ワンダー』以降の個人映画へと尖鋭化したマリック作品における、エマニュル・ルベツキ風の撮影が見事に血肉化されて受け継がれている。やがて瞑想的なトーンを深めていくが、宇宙のリズムと交歓するような映像×音響と、どこか古風な学園模様や日本の原初的な情景とのマッチングが実に面白い。
撮影や編集なども兼任する監督は、1998年生の新鋭・伊地知拓郎。固有のヴィジョンを持ったシネアストの登場を歓迎したい。
この短評にはネタバレを含んでいます





















