郷:映画短評
ライター2人の平均評価: 4
痛い記憶を映画の魔力で陶酔に変える。このセンス、今後が楽しみ
大人になりかけると人生には理不尽なことも起こり、夢やぶれる。そんな時、子供時代の無邪気な記憶を愛おしみ、その後の人生を生きていく。一人の映画作家が、これから何を目指すかという葛藤が、物語に鮮烈にシンクロした。
人と人の距離感、ベースを回る野球選手を心地よい横移動で捉えるカメラ。音楽も、緊迫を高めるドラム、既成のクラシック、メランコリックなコーラスが状況を巧みに演出。全体の構成力も含め、初長編とは思えない映画的計算とセンス、非凡なテクニックに満ちている。
空や海、無人の校舎など、いわゆるイメージカットが過剰に投入されるが、そのどれも美しく陶酔させるので、ノスタルジーに胸が熱くなる人も多いのでは?
「競争」から離脱し、自然と宇宙を内的に旅する
レイチェル・カーソンの引用から始まり、海/波のショットを経て本編に入る。まず序盤、高校野球部の練習風景を捉えた流麗なカメラワークを目にして、これはテレンス・マリックじゃないか!と驚いてしまった。『トゥ・ザ・ワンダー』以降の個人映画へと尖鋭化したマリック作品における、エマニュル・ルベツキ風の撮影が見事に血肉化されて受け継がれている。やがて瞑想的なトーンを深めていくが、宇宙のリズムと交歓するような映像×音響と、どこか古風な学園模様や日本の原初的な情景とのマッチングが実に面白い。
撮影や編集なども兼任する監督は、1998年生の新鋭・伊地知拓郎。固有のヴィジョンを持ったシネアストの登場を歓迎したい。






















