ナギダイアリー (2026):映画短評
ライター3人の平均評価: 4.3
平穏な田舎の日常風景から浮かび上がる生きづらさ
豊かな自然に囲まれた架空の田舎町ナギを舞台に、実家でひとり静かに暮らす彫刻家・寄子のもとへ、弟の別れた妻ながら今も親しい建築家・友梨が訪れる。親友同士の女性2人が田舎のスローライフを満喫しながら旧交を温め癒される話…かと思いきや、そのほのぼのとした平穏な日常風景からじわじわと浮かび上がるのは、一見したところ理想郷のような田舎の、狭い地域社会だからこその息苦しさ。中でも特にフォーカスされるのは性的マイノリティの生きづらさである。これはいわば、ままならぬ周囲の現実と折り合いをつけながらも、自分の居場所や自分らしい生き方を模索する人々の物語。大人だって子供だって、人生は常に手探りなのだ。
自分ともう一人の自分の物語
深田晃司監督がなんと9年も費やして仕上げたというヒューマンドラマ。そこまで大きな出来事が起きるわけではないものの、自分が出逢うもう一人の自分を描いた面白い作りの映画になっていました。都市部から離れ、自然が豊かな土地では流れる時間も自然と緩やかになり、それまで意識しなかったようなことが思い浮かんでくるという流れは短いテンポで答えを求め続けられている現代社会とは真逆のもので、久しく味わっていなかった感覚を味わうことができます。そのきっかけに彫刻という創作行為が使われるのも巧い選択。メイン3人はもちろん脇の面々も好演が光る。
ドラマの核心、それぞれの心情が深く鋭く解かれる映画的歓び
「ここが素晴らしい」と説明しづらい。しかも、めちゃくちゃ劇的な何かが起こるわけでもない。それなのに不思議な魅力に心が囚われる。
メイン4人の登場人物、それぞれの実状や内面が徐々にあらわになっていくが、それが人間関係を綴るドラマに見事にフィット。脚本の巧妙さに恐れ入るばかり。シーンとシーンのつなぎも各心情の揺らぎを伝えるうえで計算されている。作品テーマを深める舞台となる町の現実、映像の感触によるエクスタシー、唐突な展開も「若さ」として眩しく映るなど、あらゆる点で上級の表現に陶酔した。
主演・松たか子とクレジットされるが、実質的な主人公は石橋静河の元義妹で、彼女の変化が「人生の豊かさ」に帰着する。























