ボタニスト 植物を愛する少年 (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
テレンス・マリック的であると同時にチャン・イーモウ的
中国西北部の新疆ウイグル地区、自然豊かな草原地帯を舞台に、植物をこよなく愛するカザフ族の少年の日常が繊細な筆致で綴られる。時代に取り残されたような田舎、昔ながらの生活様式を守る人々、大都会に馴染めず帰って来た兄、反対に都会へ出て行く漢民族の少女との淡い初恋、そして静かに少しずつだが着実に迫りくる近代化の波。これといった明確なストーリーはなし。美しくも雄大な中国の原風景とそこで逞しく生きる人々を映し出しながら、見る者の胸にある種の郷愁や畏敬の念を呼び覚ます神話的・寓話的な作風は、テレンス・マリック的であると同時にチャン・イーモウ的でもある。これが長編デビューのジン・イー監督、要注目の才能だ。
ビー・ガンやグー・シャオガンに続く新世代の才能
新疆ウイグル自治区出身の新鋭ジン・イー監督(94年生)の長編デビュー作。13歳のカザフ族の少年の視線を通し、風景が記憶を抱く瞬間を精緻に掬い上げる。キアロスタミやテレンス・マリック、サタジット・レイからの影響を独自昇華した瞑想的な映画言語。自然と語り、水に触れる仕草が草原へ滲む内面の揺らぎをそっと照らす。
漢民族の少女メイユーとの初恋は、異なる植物が同じ土に根を張るように芽吹く。迫りくる近代化、上海までの遠い距離。去る者と残る者の対比の中で、川は記憶の導線となり、馬は精霊めいた存在として少年の孤独を受け止める。ジン・イーは風景を語り手へと昇華し、普遍に開く静かな詩情を確かな輪郭で描き出した。




















