新凱旋門物語 (2025):映画短評
こんなにビターな「物語」だとは
1980年代、ミッテラン政権下で建てられた新凱旋門。このフランスの記念碑を、無名のデンマーク人オットーが設計する事実のねじれがまず面白い。だが舞台裏の混乱は、個の理想が国家プロジェクトに摩耗していく過程を示し、創造の純粋性が政治と産業に侵食される様を精密に描く。
巨大なキューブという超大作のヴィジョンを譲らぬ完璧主義は、官僚の現実主義と衝突し、オットーは孤立に沈む。妥協の積層は映画制作の構造とも重なる。シュビロン役のX・ドランは軽妙な存在感を放つが、内には別の感情が渦巻いていたはずだ。誰も悪人ではないのに魂は搾取される――そのすれ違いの痛みこそ、作家とシステムの永遠の課題である。
この短評にはネタバレを含んでいます


















