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「裸のランチ」などビートニク世代の小説家ウィリアム・S・バロウズのドキュメンタリー映画が完成

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ヨニ・ライザー監督
ヨニ・ライザー監督

 「裸のランチ」「ソフト・マシーン」などを執筆したビート・ジェネレーションを代表する小説家ウィリアム・S・バロウズを描いたドキュメンタリーが制作され、その新作についてヨニ・ライザー監督が語った。

ウィリアム・S・バロウズを題材に扱った映画『バロウズの妻』場面写真

 同作は、アメリカ文学の一時代を築き上げたビートニク世代のバロウズの貴重な映像や、親しかった友人との会話、さらに彼に影響を受けたパティ・スミスイギー・ポップガス・ヴァン・サントなどの数多くのアーティストのインタビューが含まれている。さらに映画は、バロウズがドラッグやアルコールに溺れ、妻を過って射殺してしまった悲劇の事件にも触れている。

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 ウィリアム・S・バロウズのデビュー作であった「ジャンキー」は、当時のアメリカ文学界で評価されていなかったことについて、ヨニ監督は「彼は、当時自分の体験(ドラッグ依存症であったこと)を基に、パルプノベル(三文小説、大衆小説)のような小説を執筆しようとしていたんだ。それに、その時はお金目当てでもあったから、他の作品と比べて、比較的評価が低いのかもしれないね。ただ、その次に執筆していた『おかま』(書かれたのは1951~53年だが、出版されたのは1985年)は評価が高いんだよ。もちろん、その後に執筆した『裸のランチ』で評価されることになったけれどね」と語り、さらに監督自身が15歳のときに読んだ「裸のランチ」に衝撃を受け、長いリサーチを経て、この映画を製作したことも明かした。

 バロウズは、妻を過って射殺してしまった事件の後に、モロッコのタンジールに住んでいた時期がある。「彼はモロッコに住んでいたときに、最も困難に陥っていたと思う。彼はそこで、全くこれまでとは違った世界に入り込んでいるからね。でもそれがきっかけで、僕は『裸のランチ』という世界を作り上げたと思っている。タンジールは世界的な文化が密集していて、彼にとって、単に現実逃避するだけでなく、文化的な影響も受けていた場所だったはずだ」と教えてくれた。この時期にバロウズは大きな変化を遂げていて、自らもこの時期と妻を射殺してしまった事件がなければ、作家になっていなかったとも語っていた。ちなみに妻の射殺事件とは、当時妻と共にドラッグ依存症だったバロウズが、ウィリアム・テルという勇気試しのゲームで、妻を過って射殺してしまったという事件である。

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 彼はゲイではあるが、ゲイ・ライツ・ムーブメントなどに否定的なのはなぜかとの質問に「彼は自分自身がゲイという一つのレッテルを貼られるのことを、何よりも嫌っていたと思う。なぜなら彼は、それ以上のもの(文学的才能)を持ち合わせていたからだ。もちろん、ゲイの文化に与えた影響は大きいけれど、これだけ大きな影響与えていながら、ゲイの活動や運動に否定的なのは、ある意味面白いと思う」と答えた。

 タイプした紙をバラバラに刻んでランダムにつなげるというバロウズの「カット・アップ」の手法は有名だが、「『カット・アップ』の手法は文学界だけでなく、多くの分野に影響を与えたと思うんだ。特に、映画界はその影響が大きい。ミュージック・ビデオもその典型のように思える。音楽界では、デヴィッド・ボウイなどに影響を与えていた。ただ彼は、これまでの手法をあくまで脱却しようとしていただけだと思う」とヨニ監督が語ったように、バロウズの文学はあらゆる分野に影響を与え、特に音楽界のパンクの分野ではバロウズの影響を多大に受けているミュージシャンがたくさんいる。

 ビート世代の詩人アレン・ギンズバーグや作家ジャック・ケルアックらと共に、アメリカ文学を語る上で、彼の存在は欠かせない。映画は、バロウズのアイデアや価値観が垣間見れる作品に仕上がっている。

 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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