山崎まさよし、14年ぶり長編映画主演の理由 人生を変えた出会いから22年

山崎まさよし - 写真:中村嘉昭

 シンガーソングライターの山崎まさよしが、日本ミステリー界の巨匠・横山秀夫の小説を映画化した『影踏み』(公開中)で、孤高の泥棒という異色のダークヒーロー役で主演を務めた。長編映画の主演は『8月のクリスマス』(2005)以来、約14年ぶりとなる。「本来、自分がやっているのは音楽活動ですから、俳優をやることに対しては基本的にいつも躊躇がある」と明かす彼に、本作への出演を決めたきっかけについて聞いた。

【動画】『影踏み』予告編

 原作は、『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64‐ロクヨン‐』などをはじめ、多くの小説が映画やドラマになってきた横山秀夫作品の中で、その小説的仕掛けゆえに、長らく映像化不可能と言われてきた同名連作短編集。悲しい過去を背負いながら、凄腕のノビ師(深夜に忍び込む窃盗犯)として孤独に生きてきた男、真壁修一(山崎まさよし)が、2年間の刑期を終えて出所した後、自分の逮捕の原因となった事件の真相を解き明かしていく。

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 監督の篠原哲雄は、自身の長編監督デビュー作『月とキャベツ』(1996)の主演俳優に、当時、新人ミュージシャンだった演技未経験の山崎まさよしを抜擢した20年来の盟友。『月とキャベツ』は群馬県で撮影された作品であり、その縁で、群馬県「伊参スタジオ映画祭」で毎年上映されている。そして『月とキャベツ』の公開20周年を迎えた2016年、同映画祭で山崎と篠原監督が再会し、そこに山崎が「もともと大ファンで全作を読んでいた」という横山秀夫が映画『64‐ロクヨン‐』の原作者として招かれたことが、今回の企画の始まりだった。

 「まず、横山秀夫さんと出会えたことが大きいですね。伊参スタジオ映画祭の控え室で、僕とシノさん(篠原監督)と横山さんの3人でいろいろ盛り上がって。自然発生的に『横山秀夫原作の映画を山崎まさよし主演で作ろう』という話になったんです。後日、横山さんから『山崎さん、これがいいんじゃないですか?』と言っていただいたのが、まだ映像化されていなかった『影踏み』でした」

映画『影踏み』でノビ師にふんする山崎(右) (C) 2019 「影踏み」製作委員会

 篠原監督はもちろんのこと、撮影や録音などのスタッフも『月とキャベツ』のときのメンバーが再集結することになった。「周りからガッツリ固められた、っていうところもありますよね(笑)。旧知のスタッフばかりなので、僕も1セクションとして作品を作るということに集中できますし。いわゆる、ちょっと華やかな主演ということは置いておいて、何か自分にできることがあるのではないかと思いました」

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 積極的にやらせてくださいと手を挙げたというわけでも、役者としてのブランクに不安がまったくなかったわけでもないのに「自然に吸い寄せられたような」不思議な感覚。「現象として、もう引くことはできないというか、ここで『僕は役者じゃないから』って言うのは……はっきり言って無粋ですよね(笑)」と振り返る。

写真:中村嘉昭

 篠原監督と長編映画でタッグを組むのは『月とキャベツ』以来、実に22年ぶり。撮影時、山崎は24歳、監督は34歳。監督はこのときのことを「奇跡的な出会いだった」と後に語っているが、山崎にとっても『月とキャベツ』はやはり「特別な作品」であることは間違いない。

 「シノさんから出演のオファーがきたのも、たまたま前日に僕のライブを観たというのがきっかけで。ちょうど映画のストーリーにぴったり合って、テーマ曲にもなった『One more time, One more chance』もできていたところで。不思議だけれど、いろんなことがタイミング的にすごく重なっていた。ひょっとしたら……あの作品がなければ、自分はここにいなかったかもしれない」というのは彼の率直な気持ちだ。

 「僕は当時、演技も、劇中の音楽を手がけたのも初めて。フィルム作品の経験もあれが最初で最後。シノさんにしても初めての長編映画でしたしね。何ていうか、本当にすべてが初めて尽くしの作品だった。人生において、すごいターニングポイントになった出来事です」。運命に導かれて生まれた“月キャベ”の名コンビの絆は、長い時を経て、今さらに強くなり、深い広がりを見せている。(取材・文:石塚圭子)

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