俳優・三浦春馬さんの軌跡を振り返る

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三浦春馬さん - Rachel Murray / Getty Images

 2020年7月18日、俳優の三浦春馬さんが俳優としてだけでなく、人としての歩みも止めた。7歳のとき、NHK連続テレビ小説「あぐり」(1997)でデビュー。子役としてスタートし、「14才の母 ~愛するために 生まれてきた~」(2006)で注目されて以後、映画にドラマに舞台に、そして近年はアーティストとしても活動した。ここでは、俳優、三浦春馬としての歩みを振り返る。(文・浅見祥子)

駆け足で、一線級の俳優へと上りつめる

 16歳で初めて主演を務めた映画『キャッチ ア ウェーブ』(2006)はまさに、スター誕生! を思わせた。湘南の海でサーフィンと出会った高校生3人組(木村了濱田岳!)のひと夏の恋やら成長やらを描く王道の青春モノ。三浦さんは、声変わりしたばっかり? みたいな少年のあどけなさで、でも整った顔立ちは完成に近づいていて、存在自体がもう衝撃的にさわやか! あのとっておきの笑顔はすでに作品の中心にいて隅々までを照らすのに充分な輝きを放った。

 新垣結衣と主演を務めた『恋空』(2007)は、当時ブームだった女子高生によるケータイ小説をもとにしたラブストーリー。ヒロインの美嘉を演じるガッキーが無敵にカワイイこの映画で、金色の髪をとがらせたヒロを演じた。一見遊び人風だけど公園の花壇にこっそり肥料をあげちゃうくらいに心優しく、誰よりも彼女を大切に思って全力で守ろうとする。女子にとっての夢を体現してがっちりとティーンのハートをつかみ、ちょっとした社会現象に。

 仲間由紀恵がヤクザの組長の娘で不良生徒を導くメガネっ子の熱血教師ヤンクミを演じ、松本潤小栗旬成宮寛貴上地雄輔松山ケンイチ亀梨和也赤西仁小池徹平水嶋ヒロ高良健吾などなど、書ききれないほどのスターを輩出した若手俳優の登竜門「ごくせん」シリーズ。2008年、その第三期で三浦翔平高木雄也ユージらと共演し、ヤンキーの風間廉を演じた。前髪と襟足にメッシュを入れて片側だけ軽く編み込みをし、裏地が紫色の短ランを腕まくり。赤シャツをチラ見せするというキメキメのスタイルも、三浦さんがやると本気でスタイリッシュ。汚れヤンキーには全然見えない。

 同年、「ブラッディ・マンデイ」(2008)ではウイルステロを目論むテロ集団と戦う高校生の天才ハッカーを演じた。海外ドラマを思わせるストーリーで、連ドラ初の単独主演。2010年には第2シーズンも放送され、いわゆるゴールデンタイムで作品の主軸を担う一線級の俳優としての地位を築くことに。それはあっという間のことだった。

 上野樹里と三浦さんを主演に迎えて撮った駅伝モノ『奈緒子』(2008)は、幼少期に辛い過去を持つ奈緒子と雄介が再会、高校駅伝を目指すひと夏を描く。ランナーそのものみたいにこんがりと日に焼けた三浦さんが、ひたすらに走る姿が心を打つ。ライバル役は、サムライみたいな長髪だった綾野剛。ちゃんと長距離選手の走り方をマスターしていてこれまた格好いいのだが、クライマックスの駅伝シーンでは二人がデッドヒートを展開。ゴールを駆け抜けたときの三浦さんの顔、本気泣きの上野樹里。いや~、さわやか。

 「サムライ・ハイスクール」(2009)では何をやっても中途半端で都合が悪くなるとへらへら笑ってごまかす、内気で冴えない高3の望月小太郎役(小太郎の友人を演じる城田優も、女子からカツアゲされちゃういじめられっ子役!)。図書館で古文書を読んで以来、窮地に陥るとサムライに変身して立ち居振る舞いも一変。高い戦闘能力を駆使して、学園で起きる問題を解決していく。つまりこのドラマの肝は、三浦さんが見せるギャップ。あの見た目でヘタレ男子になり切ろうとする全力ぶりもナイスファイトだが、見ものはやはり変身後、サムライとしての佇まいや殺陣の切れ味鋭さ。デッキブラシを刀に見立ててイジメっ子を一網打尽にし、「案ずるな、峰打ちじゃ」が本気でキマるってスゴイ。

 少女漫画の実写映画化『君に届け』(2010)は本作以後、「僕のいた時間」『アイネクライネナハトムジーク』と4年にいちど共演する“オリンピックカップル”と話題を呼んだ多部未華子との共演作。彼女が演じるのは陰気な空気を漂わせ、長~い黒髪で顔を隠すように立ち、同級生から“貞子”と呼ばれてむやみに恐れられる黒沼爽子。三浦さんが演じるのは学校一の人気者である風早翔太。風早君は見た目が格好いいだけじゃない。みんなが爽子に抱く印象や噂話なんて気にせず、ちゃんと自分の目で見て、彼女がみんなの役に立ちたくて、一日一善を生真面目に守ろうとする純な心を持つ努力家なのを知っている。やがて彼女に心惹かれ、別の男子と二人で話す姿へ密かに嫉妬し、黙って手を引いてその場を離れ、「ゴメン、我慢できなかった……」とか言っちゃう風早君! きゃ~。思い出すだけで心が切なくなるようなさわやかさ。一篇の曇りもなく美しい三浦さんがそこにいる。

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肉食系男子、難病を患う青年、30歳の童貞など幅広い役柄に挑む

 20歳を越え、ひたすらにさわやかだったり甘酸っぱかったりする青春モノではない作品にも挑戦するように。『東京公園』(2011)は、『EUREKA ユリイカ』の青山真治監督による人間ドラマ。カメラマン志望のごくフツーの大学生である光司を演じた。見知らぬ男から「小さな娘を連れて散歩する美しい母親(井川遥)を撮影してほしい」と依頼され、男からのメールで指示を受けてその日のお散歩先に出向き、母娘を尾行して撮影していく。ゾンビ映画が大好き! な幼なじみの富永(榮倉奈々)、親友のヒロ(染谷将太)、血のつながらない姉の美咲(小西真奈美)。静かで優しい映画をその中心でがっちり支えたのは、三浦さんの根っこの美しさだった。

 「ラスト・シンデレラ」(2013)で演じた大神広斗は、大会社の御曹司でBMXライダー。もちろんハンサムでもあって超モテキャラなのだが、肉食系でもあるというのが三浦さんとしては珍しい役どころ。これがまたピタリとハマる。篠原涼子演じる、40歳を前に“オヤジ女子”化するヒロインに、あっという間に恋する心を取り戻させるのも納得。ハンサムで格好いいことを照れにも言い訳にもせず、正面切った武器にする。そんな役回りを楽し気に演じる姿は、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)で長髪をかきあげてレコードを回すクラブDJ、『コンフィデンスマンJP』シリーズの恋愛詐欺師ジェシーへと続く。2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」でも、直虎の幼なじみで許嫁だった井伊直親を演じた彼の笑顔がとっておきだったからこそ、直虎の壮絶な人生が際立った。

 「僕のいた時間」では筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症、しだいに体の自由を奪われる青年を演じた。難病モノではあるけれど青春モノで、家族のドラマでもある静かな力作。身体能力が人一倍高い三浦さんは、その機能が一つひとつ奪われることをリアルに真摯に体現していく。病が進行し、「生きるのが怖い」と言って泣く、感情表現もまた進化。

 「オトナ高校」(2017)は、少子化に歯止めをかけようと性経験のない30歳以上の男女を公的機関「オトナ高校」へ入学させ、真のオトナになるための英才教育を受けさせる「第二義務教育法案」が成立……って、SF!? と言えなくもない設定のドラマ。そしてその実、三浦春馬が童貞で黒木メイサが処女を演じるという、んなアホな! なオトナのための学園コメディーである。三浦さんは東大卒でエリート行員の荒川英人役。見た目のよさと学歴と能力の高さから過剰に膨れ上がったプライドを持て余し、まともな告白さえできず、間の悪さも人一倍という英人をとにかく全力で演じる。オープニングの超絶キレっきれダンスだけでも観てほしい。カッコよすぎて笑える、ってあるんだなと。

 『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)は筋ジストロフィーが進行し、首と手しか動かせない主人公の鹿野を大泉洋が演じる実話を基にした人間ドラマ。鹿野は24時間介助が必要なのに病院を出て一人暮らしをするのだが、入れ代わり立ち代わりやってくるボランティアの一人で医大生の田中を演じる。その恋人役の高畑充希との演技に注目。人のために尽くすイケメンのさわやかな青年、だけではない。どんな人間でも奥底に隠す美しいとは言えない感情がずるずるっと顔を出し、キャラクターの奥行を深めている。

 『アイネクライネナハトムジーク』(2019)ではごくフツーの会社員役。今泉力哉監督が描く、特別なセリフや過剰な演技はないのに絶妙にリアルで笑える、みたいな世界観にもすんなりとなじんでみせた。繰り返すけれど、あれほどのイケメンなのに、本当にフツーの青年として。

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舞台にアーティストにMCに挑戦!

 そして近年は、確実に活動の場を広げていた。初舞台は、岸谷五朗寺脇康文が率いる地球ゴージャスの「星の大地に降る涙」(2009)。ステージ上の三浦さんは、本当に光り輝く。長身で、立っているだけで全身から華やかなオーラがシャワーのように客席へ降り注ぐ。そのうえ歌って踊るとなると、もうまぶしくてたまらなくなる。彼の美しさは、顔カタチだけではないことを思い知らされる。

 「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII」(2012)では芝居も歌も動きも確実な進化を遂げた。そしてミュージカル「キンキーブーツ」(2016・2019)だ。2005年の映画を基にしたブロードウェイ・ミュージカル。濃厚なメイクを施し、どれだけの時間と労力を費やしたのかと途方もない気持ちになるほどの肉体改造でドラァグクイーンのローラを構築。ピンヒールで華麗に歌って踊る姿は、もはやミュージカルスターの貫禄充分だった。

 昨年には主演ドラマ「TWO WEEKS」の主題歌で歌手デビュー。俳優としての印象とは異なる高音の歌声、切れ味鋭いダンスは“俳優の片手間”とは異なる本気を感じさせ、2ndシングル「Night Diver」に収録された「You&I」では作詞・作曲まで手掛けた。NHKの紀行番組「世界はほしいモノにあふれてる」でMCに挑戦と、なんという多彩さ。

 俳優としての最新作は映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(2020)。あのジェシー役で登場。長澤まさみ演じるダー子と、まさに彼でなくてはできない見せ場をつくってみせた。

 ここで取り上げた映画やテレビドラマは、これからもずっと観ることができる。今後も映画『天外者』、8月にNHKで放送のテレビドラマ版と異なる視点で描かれる映画版『太陽の子』が新たに公開される。でもこの先、彼が新しい作品の撮影に参加することはないし、ステージに立つ彼を観ることは二度とない。その事実が、本当に信じられない。

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